伝承 〜 A Young Person's Guide to Fairy Tsume Shogi

はじめに
 2019年7月14日、大阪産業創造館で開催された第35回詰将棋全国大会でのことである。私は会場隅の書籍販売ブースで自身の最新フェアリー詰将棋作品集「TAROTRAILS」を配布していた。そこにやってきた青年の名札には「上谷直希」とあった。二刀流の新鋭である。彼は「TAROTRAILS」を受け取ると遠慮がちに『相談がある』と切り出した。フェアリー詰将棋の入門書を企画していて、その実現に協力して欲しいという。
 企画書には入門ながらフェアリー詰将棋の歴史にも触れ、名作集の側面も持たせる趣旨の記述があった。翻って目次案や一部ドラフトを見る限り、趣旨実現には少し距離がありそうだと感じた。協力は約束したもののその場では大したアドバイスもできず、全国大会から帰宅したあと、改めて企画書とドラフトを読んでメールしたのだが、アドバイスというより自分がやりたいことを書いただけになってしまったようだ。
 実は来年の詰将棋全国大会のときには私は定年を迎えている。そういう年齢になってきたときに会社の中で何を期待されるかというと、「専門性の発揮」と「後進の育成」である。その実践の仕方には色々とあるが、例えば身につけている知識や経験をドキュメント化して関係者、特に若い人と共有するというのが一番手っ取り早い方法である。「フェアリー詰将棋入門」の話しを聞いてあれこれ考えているうちに、フェアリー界隈でも同じ状況なのだと気づいた。そして、過去のフェアリー詰将棋やその研究などのフェアリー資産をフェアリー愛好家の共有財産として次の世代に引き継いで行くことが先に道を歩んできた我々ベテランの責務なのだと思った。
 そういう観点で構想したのがこの「A Young Person’s Guide to Fairy Tsume Shogi」である。「入門」でも「名作集」でもない。「伝承」である。若手に限らず、フェアリー愛好家で共有して欲しい資産を整理した。一部資産については新たにWebで参照できるようにした。
 本構想の実現に向け様々なかたちで協力をいただいた下記諸氏にお礼申しあげる。
  石黒俊太郎/神無次郎、磯田征一、上谷直希、加藤徹/TETSU、金子清志、
  小林看空/神無三郎、酒井博久/神無八級、佐藤達也、須川卓二/たくぼん、須藤大輔、
  筒井浩実/片岩裕貴、中島和男/神無右京、橋本孝治/神無七郎、服部敦/神無六郎、
  泰永三二朗/安永玲(敬称略)
 今後の伝承は上谷直希氏らの若い世代に託したい。"Carry on, my wayward son".

第1.0版 2020年9月21日 山下繁実/神無太郎

コンテンツ
Fairy Heritage I 公開ページ
 Webで公開されていない代表的なフェアリー資産の紹介と公開。
 「詰将棋パラダイス」、「カピタン」、「将棋パズル」、「将」、「Online Fairy Mate」

Fairy Heritage II リンクページ
 Webで公開されている代表的なフェアリー資産のまとめ。
 「Onsite Fairy Mate」、「おもちゃ箱」、「九州G作品展フェアリー別館」、「Takubon's詰将棋」、
「神無太郎/プロフィール」、「妖精都市」、「Web Fairy Paradise」、「詰四会のホームページ」、
「詰将棋一番星」

幻想詰将棋型録(新装版)/泰永三二朗
 フェアリー詰将棋の到達点と未到の分野を照らすという雄大な意図をもって泰永三二朗氏が「カピタン」に連載した幻想詰将棋型禄の新装版。

フェアリー詰将棋の歴史(集成版)/神無七郎
 令和を記念して神無七郎氏が「Web Fairy Paradise」に連載したフェアリー詰将棋の歴史の集成版。 連載時の割愛話題も一部補筆
 フェアリー創生期に将来を見据えて書かれた幻想詰将棋型緑と、現代の視点から俯瞰的、多面的に過去を振り返ったフェアリー詰将棋の歴史は読み比べてみるのがお勧め。

フェアリー詰将棋のルール説明(増補版)/酒井博久
 「TURN OF THE CENTURY」収録の過去のどんなものよりも丁寧なものに仕上がっている酒井博久氏のフェアリー詰将棋のルール説明の増補版。

フェアリー詰将棋の紹介(V3.1)/S.ヤマシタ
 F*社の社内プレゼン用に準備したが事情があって未発表となっていたフェアリー詰将棋の紹介。 一般向けの紹介を意図したものだが、これまた事情があって読めばわかるというほど親切なものではない。


「伝承」構想 添付 管理者・更新履歴