フェアリー別館 第10回
2006年11月03日: 課題発表:限定打(協力詰)
2006年12月28日: 投稿締切
2007年01月01日: 出題
2007年01月07日: 追加出題:10-07
2007年01月28日: 解答締切
2007年02月01日: 結果発表
2007年02月02日: 追加コメント



課題発表

第9回の解答募集の際に第10回の課題募集を同時に行うのを失念していて、急遽「妖精都市」掲示板にも書き込んだのですが、 提案があったのは、小峰・若林の二氏のみでした。
小峰氏からは「僕は双玉が好きですが、敢えて単玉の限界に挑戦するのも面白いかな」ということで、「単玉」という御提案。 若林氏からは「開催回数10回突入」ということで、「二桁」という御提案。
せっかくの御提案ですが、どちらも茫漠としすぎていますねぇ(笑)。ここは担当の独断で申し訳ありませんが、「限定打」という ことにしておきます。斬新なアイデアを期待します。
酒井博久



出題

今回は担当の独断で「限定打」という課題に決めてしまったのですが、ちょっと失 敗だったかも。協力詰なので「限定」なのは必然としてもその意味付けに期待したの ですが、どうも斬新なものは出にくかったようです。普通詰でいう「スカシ詰」が成 立しないので、最終手の以遠打が解消できるという、ルールに支えられた「限定」で は意味がないし・・・。
結局、集まったのは小品ばかり6局です。少なすぎるので私もちょっと考えてみた のですが、力及ばず。物足りない感は否めませんが、それぞれの「限定打」の意味付 けをお楽しみ下さい。
解答締切は1月28日。担当者までメールにて。なお、10-04は「受方持駒なし」なの で、その点ご注意ください。
酒井博久



追加出題:10-07

たくぼんさんのHPに一局紹介してあったので、無理やりスカウトしてきました。 作者自身はご不満かも知れませんが、ご承諾ありがとうございます。
これで合計7局。2007年、ラッキー7ということで、いいのではないでしょうか?
酒井博久



結果発表

毎回、締切間際まで解答が集まらず、その度にハラハラさせられます。今回も同様 の思いをしたのですが、解答者は全部で6名。何とか格好が付きましたか。

たくぼん−なかなかバラエティに富んで面白かったです。このくらいの難易度が ちょうど楽しめます。解答者が増えるといいですね。

なかなか増えませんねぇ。景品でも出したほうがいいのかも。

【全題正解者】(五十音順、敬称略)
榎○・隅の老人B・たくぼん・橋本孝治・もず

さて、今回のテーマは「限定打」。パッと思いつく意味付けとしては、(1)取ら せるため(守備駒の移動)、(2)取るため(合駒をかせぐ)がありますが、各作 品、どんな工夫が凝らされているでしょうか。
酒井博久



追加コメント

解答発表に対して小峰・たくぼん両氏からコメントをいただきましたので、追加記 載しておきます。
酒井博久



10-01 もず
  10-01 もず 協力詰 5手
 
               
               
             
               
                 
                 
             
               
               
 

24飛 44龍 14角 43玉 32角成 まで 5手

もず−参加だけはということで、前回と同じ 限定打→移動合→空王手 のパターンを 再利用しました。
余詰防ぎが野暮ったくて明快さが損なわれてしまいましたが、このくらいしないとま とまりませんでした。

★前局(図面省略)は、「29香(限定遠打)、23馬(移動合)、28馬(空王手)、32 馬(移動合)、55馬(両王手)」という手順構成でした。本局の初手で、14に打つと 3手目14角の邪魔になるし、34に打つと最後玉に取られてしまいます。よって、24と いう中途半端な位置に打つという仕組みです。

榎○−角の道を開けるための限定飛車打ち。その表現力に感服。

小峰−一見中途半端な所に打つのは価値がある。飛打ちの選択肢を狭める駒も殆ど無 いんですね。
一路左にずらして更に初手を強調する手もあるかも(初形がアンバランスです が…)。

★それだと、初手14飛〜24角で作意同順の余詰が成立しませんか?

小峰(追加コメント)−確かにご指摘の通り不成立ですね。何か勘違いしたみたいです。

隅の老人B−遠くの馬が恐いなぁ。竜の移動合が、よろしいようで。

たくぼん−7六角〜5四飛がそれらしく見えて時間が掛かりました。
4七龍をじーっと見ていてふと角の右への軌跡が浮かびました。5手詰とすれば難 解といえるでしょう。

★47龍の存在が作意を見えにくくしている面はあると思います。

橋本−最初構図を見たときに「遠打―移動合―開き王手―移動合―両王手」のパター ンを思い浮かべたのですが、よく見るとそれは無理。
角の移動場所と飛の利きの保持のための限定打とは、なかなかひねってますね。

★苦心作であることは分かるのですが、作者の感想にもあるように、少し明快さに欠 ける感は否めません。



10-02 神無太郎
  10-02 神無太郎 協力詰 7手
 
                 
                 
                 
               
                 
                 
               
                 
                 
 

19香 18銀 同香 25玉 36銀 26玉 27香 まで 7手

太郎−ぎりぎりの簡素形からの限定遠打。

★コメントも「簡素」ですね。今回は「たらう」名義ではないのは何故?

榎○−合駒が銀という心理的引っ掛け。その罠に苦悩。

たくぼん−どう見ても限定できるとすれば1九香で1八合だよなあ〜と思いつつ銀合 に気付かない私。太郎さんのニヤリとする顔が目に浮かぶ。

もず−簡素な図式から遠打と短打の対比が鮮やか。ばか詰で銀合はあまり見ないよう な気がします。

★統計的なことは分かりませんが、確かに銀合は少ないように思います。

隅の老人B−初手は兎も角、合駒で悩む。最終手が協力詰の好手です。

橋本−この課題で初手19香だったら当たり前過ぎるな」と思ったら、それが作意。課 題作でなければ、遠打と短打の対比が映えるのですが。

★最終手の短打は、ルールに依拠した限定ですね。

小峰−厳密に言えば限定打3回(合駒も入れれば4回?)ですが、実質的には初手の みで課題クリアという感じ。
個人的には47金→王で双裸玉にしたい。

★「限定打」とは通常(あくまで通常ですが)「飛道具(飛角香)の打場所」の限定 を意味し、飛道具以外にはあまり使わないのでは?
また、47の駒は金のほうが王手出来るぶん、紛れが多いように思います。まぁ、こ の辺は好みでしょうが。



10-03 神無太郎
  10-03 神無太郎 協力詰 7手
 
                 
                 
                 
                 
                 
                 
                 
               
               
 

49香 38玉 39香 27玉 28香 16玉 17香 まで 7手

隅の老人B−持駒は4香、手数は7手。打って行けば、終わります。

たくぼん−う〜むこれは。小西得郎さんではないですが“何と申しましょうか?”

★第一感、「家族そろって歌合戦」が浮かんだんですが、あれは高木東六さんでした か・・・。小西得郎さんは野球の名解説者でしたね。
しかしまぁ、こんな話をすると、お互い歳がバレますね(笑)。

榎○−誰にでも解けるほどの簡単さで、香4連打、盤上2枚。その記録に驚き。

★記録面はともかく、誰しもが本作の狙いには首をひねるのではないでしょうか。
で、作者の答えは・・・。

太郎−ぎりぎりの簡素形からの必然的限定打の連発(テーマに対するアンチテーゼ)。

★ということです。何と正解者がいらっしゃいました。

橋本−何と紛れゼロの限定打…って、こんなのあり!? 課題への反逆のような課題 作。

★さすが一族同士、通じるものがあるんですかね?

もず−解くのは容易ですが、作り方としては完璧ですね。

小峰−自分のボツ作を思い出す。

★小峰さんのボツ作というのは、桂4連打の7手詰でした。
実は太郎氏が先行していたのです。しかも盤面2枚で。(「妖精都市」ジャンク ボックス第4番)



10-04 荻絵香木
  10-04 荻絵香木 協力詰 7手
 
                 
                 
               
             
               
               
                 
               
                 
 
 

98角 同龍 69香 68龍 同香 56玉 55飛 まで 7手

荻絵−休業宣言したのに何だという感じですが・・・。
限定打ということで浮かんだイメージを形にしたら意外と短時間で制作でき、駒数 少なく実現できたといった感じです。斬新とは言えませんが、客寄せにでもなれば・・・。

★受験のほうはどうなっているのでしょうか・・・。気鋭の作者、本局でも魅せてく れました。

隅の老人B−迂闊にも、最初は持駒有りで考えた。竜の移動合、お上手。

もず−このスイッチバックを作ろうと思ったのがすごいと思います。持駒制限をかけ るのは仕方なさそうとして、これだけ簡素にできるものなのですね。

榎○−竜のバックを表現。駒の使い方に納得。

たくぼん−今回のNo.1はこれ。後手の持駒制限が成功している図でしょう。王配 置の限定も見事です。

★取られるためと取るため、両様の限定打がセットになっているのが魅力です。受方 持駒制限があるとはいえ、ここまで簡素に仕上げられた点も感心しました。
しかし、満足しなかった方もいました。

橋本−受方持駒制限から大技を期待したのですが、普通の手順でした。

小峰−角は右から打つと思い込んで結構悩んだし、36王が作意に紛れに良く働いてい て感心したし、決して悪いとは言わないんですが、この作者名を見るとついつい贅沢 になっちゃうんですよね。

★期待の表れと受け取っておきましょう。



10-05 小峰耕希
  10-05 小峰耕希 協力詰 9手
 
                 
                 
       
         
         
       
             
             
               
 

39香 38龍 同香 37龍 同香 36銀 95飛 85角行 55飛 まで 9手

小峰−一応限定打3回に玉方全着手移動合ですが、よく見ると「詰四会の氾濫」の自 作と太郎作のテーマを無理矢理統一しただけのようにも思え…。花駒とか露骨な余詰 対策の配置は改善出来るかも知れません。
しかし、自作に移動合が多くて打合が滅多にないのは、移動合の感触が好きなの か、それとも打合にすべき所を妥協しているだけなのか…。

★10-03の解説でも触れたとおり、本作は前図ボツの後、急遽差し替えてもらった作 品です。
詰上りとの関係上、大模様になるのはやむを得ませんが、評価については意見が分 かれました。

隅の老人B−3度の移動合。ついでに、76角も動かして欲しかった。

たくぼん−龍の連続移動合と合利かずの詰上りだが、これしかない。

榎○−最後取らせては詰まない(というのが主題かな?)。発想が特殊でおもしろ い。

橋本−全応手移動合の意欲作で、作者のチャレンジ精神を強く感じました。次は13種 移動合ですね!

★飛角金銀桂香歩+金以外の成駒ですか。取った駒の消化が大変そうですが、どなた かチャレンジを!

小峰(追加コメント)−橋本さんからは作風を見透かしたようなコメントを頂きましたが、 13種合とは何とも凄い宿題ですね。相馬さんの「どな作」といい、あの面々は挑戦させ上手なよう で…。酒井さんの仰る通り、取ると持駒の処理が大変そうなので、05-13(荻絵作) のような機構が現実的でしょうか(←多少その気)。

もず−最後の局面が詰んでいる気がしなくて他の手をいろいろ考えてしまいました。
一例ですが、こうすると飛打の距離をもう少し遠くできます。

【参考図】


★上記の事情もあり、時間不足で、推敲の余地はあったかも知れませんね。
作者は、花駒を壁として有効活用したかった面もあるのでしょう。

小峰(追加コメント)−もずさんの改作案ですが、これも酒井さんの仰る通り、個人的には花駒といえど少 しでも壁として利用したい気がします。勿論もずさんの案が劣っているとは思いませんが。



10-06 榎○
  10-06 榎○ 協力詰 21手
 
           
 
               
                 
                 
               
               
                 
 

36角 25歩 同角 同玉 29香 28と 同香 27角 同香 26歩
34角 36玉 37歩 27玉 45角 36香 同角 28玉 29歩 17玉
18香 まで 21手

榎○−どうでしょう? 限定打を入れた作品とは言いにくいですが。

★本局も10-05小峰氏作と同様、最初の投稿図に先例があり、急遽差し替えてもらっ たものです。
今回の最長手数かつ最難解の作品でした。

小峰−すみません。時間が足りませんでした(怠けていたとも言う)。

隅の老人B−此処までは、トントン拍子で、今回は楽勝? いいえ、ここで一頓挫。 角香で詰むの?
長考一番、遂に出ました、ゴチャゴチャ、闇雲流。漸く詰んで、嬉しくお茶で乾杯!

たくぼん−詰上りを想定するのに時間がかかった。
駒制限だけの配置はやはり気になります。後手の持駒制限ですっきりした方がいい のでは。

★どちらを選ぶかは、作者の好み(?)でしょうね。

もず−香は1筋で使うものと思いこんでかなり苦労しました。
これでいいと思うのですが、持駒を角香歩にしてはじめの2手を省くと47とが省略 できます。限定打という観点では、いきなりの短打にすると意外性があるかもと思い ました。

★私は、もず氏案に一票です。

橋本−詰上りの想定しにくい難解作で、本作品展随一の収穫だと思います。
この種の作品は、詰手順の限定が難しいのであまり開拓されていませんが、空間の 形や使用駒の設定を工夫することで、本格的なパズルが作れる大鉱脈と言えるでしょ う。更なる研究に期待したいと思います。

★橋本さんは規則的な趣向作の印象が強かったので、この評はやや意外でした。
でも、不規則的なパズルにも目配りされているのは、関心の広さを裏付けるもので しょう。納得です。



10-07 たくぼん
  10-07 たくぼん 協力詰 7手
 
                 
                 
                 
             
               
                 
                 
                 
             
 

59香 45玉 55飛 34玉 37香 43玉 52飛成 まで 7手

たくぼん−必然手が多すぎます。おおトリでは恥ずかしい。

★投稿断念の図として作者のHPに紹介してあったのをスカウトしてきた作品。追加 出題という形にさせていただきました。

隅の老人B−初形は綺麗で、初手は絶対だが、後の手順は素晴らしい。
こう書かれると、たくぼんさんは喜ぶだろうな。褒め殺し、煽ての意味も、多少あ る。

★必然なのは初手だけで、後は必然とまでは言えないでしょう。(逆)王手防止の意 味付けで統一されている点が気に入りました。
初形左右対称・使用駒対子のオマケもありますし。

もず−角の間接的な利きを止める37香の限定がいい感じです。

★遠く、近く、途中に、と打ち分ける呼吸がいいですね。

榎○−上で詰ますという心理的引っ掛け? これも苦労。

橋本−一瞬追い出すかのような手順が、たくぼんさんらしい。ボツにするにはもった いない作。

小峰−受賞は無理としても発表は全く差し支えない内容。

★いかがですか? たくぼんさん。

たくぼん(追加コメント)−私の作品がこんなに評判がいいとは、私の見る目はいったい??
と複雑な心境ですが、出してよかったです。感謝します。



総評など
榎○−私のを除いたら全部手数が一桁ですが、結構悩みました。限定打の意味とし て、1番と4番には感心しました。

橋本−いろいろあって、着手が締切ぎりぎりになってしまいました。「いつでも解け る」とタカをくくっていたら、榎○作が意外と難しくて焦ったり…。 解答は計画的に…でしょうか。

隅の老人B−昨年は貴HPで長時間遊ばして貰いました。お金が無くて、暇の老人に は、貴HPは有り難い、感謝です。
今年も解けた分は解答しますので、宜しくお願い致します。

小峰−1つ無解があるのは、只今初担当経験中につきご容赦を。

★森茂氏追悼作品展担当、お疲れさまです。改めてモリシゲ氏の偉大さが偲ばれるこ の頃です。



リンク
おもちゃ箱 - 詰将棋メモ 2006年11月03日