フェアリー別館 第9回
2006年08月10日: 課題発表: 使用駒三種(協力詰)
2006年09月30日: 投稿締切
2006年10月01日: 出題
2006年10月28日: 解答締切
2006年11月03日: 結果発表



課題発表

今回は九州G本館(普通詰)に沿った課題で、「使用駒三種」とします。

     注意点@:使用駒とは、盤面駒と持駒を合わせたものです。
     注意点A:生駒と成駒は区別しません。例えば、「歩」と「と」は同種とします。
     注意点B:受方玉は一種としてカウントしませんが、攻方王は一種としてカウントします。

Bについては、異論もあるでしょうが、単玉図式と双玉図式を区別したい気持ちがあり、こうしました。

協力詰の課題としては厳しいかも知れませんが、ご投稿をお待ちしています。
酒井博久



出題

「使用駒三種」という課題が難しかったのか、今回はギリギリまで作品不足に悩まされました。
それでも、窮状を「妖精都市」掲示板に訴えてからは作品投稿が相次ぎ、何とか出題数が揃いました。 ご協力いただいた作家の皆さんに感謝します。
なお、中に「使用駒二種」、「使用駒一種」の作品も混じっていますが、 これはせっかくのご厚意を捨てるに忍びなかった ものです。「使用駒三種以内」として、ご理解ください。
解答締切は10月28日(土)です。多数のご解答をお待ちしています。
酒井博久



結果発表

課題が難しかったせいか、今回は極端な作品不足に悩まされました。しかし、「妖精都市」掲示板に窮状を訴えてからは投稿が 増え、結局7氏から10作が揃い、何とか体裁を整えることが出来ました。作家の皆さんに改めて感謝の意を表します。
解答者は、榎○・小峰耕希・隅の老人B・たくぼん・もず・若林(五十音順、敬称略)の6名。全員が全題正解でした。今回は 比較的解きやすかったので解答者増を期待したのですが、結局いつもと変わり映えしない顔ぶれでした。
酒井博久



09-01 もず
  09-01 もず 協力詰 5手
 
               
       
               
                 
                 
                 
                 
                 
                 
 

29香 23馬 28馬 32馬 55馬 まで 5手

もず−作品数が不足していると聞いて、完全な客寄せとして参加させていただきました。予定調和ですね。

☆「客寄せ」とはいえ、一本筋が通っているのは流石です。

小峰−今回最も感心した作品の1つ。5手というと客寄せ的作品が多い中で、このような明快な主張を持った作品があると嬉しくなります。

たくぼん−マニアなら一目香は29へ打ち馬は28に引くのだろうが、構図の上手さに目を惹かれます。玉方の馬の動きが良い。

☆条件から13香・31香の配置はやむを得ない所ですが、12飛・32馬の配置にも必然性があります。初手55馬の紛れに備えて、11・22に 利きを作っておく必要があるのです。

榎○−5手の香最遠打、見えずに少し苦労しました。

若林−気持ちの良い限定打からのスイッチバック。

☆次回作品展の課題は「限定打」です。本作以上の作品をお待ちしています。



09-02 若林
  09-02 若林 協力詰 9手
 
                 
                 
                 
               
                 
                 
               
               
                 
 

59香 47玉 39桂 36玉 38香 37飛 同香 46玉 47飛 まで 9手

若林−作図しているうちに歩が消えて使用駒2種の軽い作になりました。使用駒3種に拘るなら44桂→35歩(54角)などでも可。

☆今回最多投稿(3作)の若林氏、本当に助かりました。本作の難易については意見が分かれました。

榎○−これしかないので簡単。

たくぼん−もう少し紛れが欲しい所(多分私との作風の違いでしょうが)。

隅の老人B−初手は決まっている、さてと。でも、合駒入りは難しいね。

☆初手が必然で香で合駒を稼ぐという共通点もあり、次のたらう氏作と比較する声もありました。

もず−03を先に解いたので48で合駒を入手しようと思って苦労しました。

小峰−Bを先に解いたせいか、完成度が今一という印象を受けてしまいました。
特に67桂が窮屈感を与えており、せめて左右対称にして欲しかった(あくまで不都合が無ければですが)。

☆作者=若林氏自身の感想は、次作の分に載せています。



09-03 たらう
  09-03 たらう 協力詰 11手
 
                 
                 
                 
                 
                 
                 
                 
               
             
 

59香 47玉 49香 48角 同香 36玉 69角 58金 同角 35玉
25金 まで 11手

もず−何か既視感があると思ったら AWAKEN 73 ですね。
香2枚にしてもこの位置なら完全になっているというのは十分に作品価値があると思います。

☆AWAKEN 73は、持駒香一枚で、57玉型の9手詰です。

たくぼん−手順は私の ばか詰図式集11番 と同じではあるが・・・形はこっちの方が素晴らしい。

☆上記たくぼんさん作へのたらう氏のコメントをご参照ください。

榎○−角の下打に気付かず、苦労しました。

☆この角打が、本作のポイントでしょう。

隅の老人B−綺麗な配置から角合、金合。良く考え出しますね、ほとほと感心。

小峰−この作者の作品には、いつもこう書いているような気もするのですが、完成品ですね。
強いて(無理矢理探して)難点を言えば、「使用駒3種」の期間が酷く短い事???

若林−丁度09-02を洗練させた図面、手順になっていて面白い。参りました。



09-04 榎○
  09-04 榎○ 協力詰 15手
 
             
               
         
                 
                 
                 
                 
                 
                 
 

22歩 31玉 32歩 同龍 21歩成 同龍 32歩 同玉 33歩 22玉
32歩成 11玉 21と 12玉 11飛 まで 15手

榎○−龍と馬、どれを取るかが問題、にしようと思ったがよく考えるとほぼ一本道だった・・・。

☆本作も難易について意見が分かれました。

もず−龍を取る展開は予想外でした。同龍から龍を移動させる手順はかなりやりにくいです。

小峰−この手順を先に13龍でやってしまい、15手で詰みそうなのにおかしい→いや、33にも龍がある→こちらが作意だった、という解図過程。

たくぼん−今回一番悩んだのは本作。2枚のと金は惜しいけど好作。

☆確かにと金配置は惜しいですね。でも、いちおう盤面対子になっています。

隅の老人B−これは楽、指し手が限られている。解ければ、やっぱり嬉しいね。

若林−手が限られているため簡単。馬は両方歩に交換可能なので課題のための配置という気はしてしまう。

☆過剰防衛ということでしょうか。三種「以内」だったら、当然歩ですね。



09-05 若林
  09-05 若林 協力詰 17手
 
               
             
                 
                 
                 
                 
                 
               
                 
 

89歩 77玉 78歩 66玉 67歩 55玉 56歩 44玉 45歩 33玉
34歩 22玉 23歩 32玉 33歩成 31玉 42と まで 17手

若林−狙いは盤面4枚での斜め7連打です。使用駒2種が不可であれば82と→82金でお願いします。

☆選題の都合上、「三種以内」も可としました。

若林−簡素図での斜め7連打は双玉にすることで実現できました。
単純ばか詰での8連打ができると面白いのですが、歩成による余詰を防ぐ良いアイディアがありません。

☆やはりこのルールでは、最大表現は無理なのでしょうか・・・。

隅の老人B−この問題が最初に解けて、作品展を解く気になりました。

たくぼん−52金→王で余詰を一掃出来たのは幸い。

もず−これは面白いですね。余詰防ぎがこれだけでまとまったのがうまいと思います。

榎○−歩の斜め打ち趣向だが・・・、少し味気ない気が・・・。でも作ろうとすると案外余詰とか防ぎにくいものなのかな?

小峰−数不足に呼応しての投稿でしょうか? 「詰将棋おもちゃ箱」のカピ展に投稿した方が喜ばれたかも。

☆淡泊さは否めませんが、簡素な表現は好感が持てます。



09-06 たらう
  09-06 たらう 協力詰 17手
 
             
                 
               
               
                 
                 
               
                 
               
 

23歩成 14玉 13と 15玉 16歩 24玉 14と 同玉 15歩 13玉
14歩 22玉 13歩成 同香 同香成 11玉 12香 まで 17手

たらう−旧作(九G第1回目の第1番)の原図を焼き直したもの。

☆原図については第1回作品展をご覧ください。本図はその収束5手からの逆算です。 さすがに皆さん、既視感があったようで・・・。

小峰−第1回作品展出品作の改訂版でしょうか?

榎○−と金の捨てる場所が限定されているのがすごいと思ったが、収束が前にも見た気がするのでみた瞬間解けました。

たくぼん−お約束の収束を知っているかで解図時間が変わりそう。

もず−詰め上がりは見えやすいですが、これで手順が限定されているのが意外な感じがします。

若林−綺麗な実戦形から軽く洒落た手順。

隅の老人B−持駒はないし、大駒もいない。19香の活動を促す、これは楽勝。

☆手が伸びた割に冴えないという見方も出来そうですが、これはこれでいいと思います。



09-07 たくぼん
  09-07 たくぼん 協力詰 23手
 
                 
                 
                 
             
               
           
             
             
                 
 

88歩 96玉 97歩 同玉 86角 88玉 97角 77玉 86角 66玉
77角 57玉 66角 46玉 57角 37玉 28金 同玉 46角 37金
同角 17玉 28金 まで 23手

たくぼん−紛れもなく平易な手順です。中途半端な感は否めませんが合駒含めて3種で97→17移動する。楽しんでいただければ・・・。

☆ということですが、作者が作者なだけに一筋縄ではいきません。角追いが印象的です。

榎○−でました、作者特有の心理作!? 実際は7手詰のようなものなのに。
理論で追求できるとはいえ余詰のありそうな大海を渡りきったのはすごいと思います。

隅の老人B−角と玉との二人三脚、目標は18金。ヨーイ、ドン。最後のゴールが少し難関。

若林−唯一の非貧乏図式。軽く右辺に追って金捨て金合いの軽い収束。

もず−18の駒はと金でも同じですが、やはり金を捨てて復活するのがいい味ですね。

☆確かに、ここは味のよい所です。

小峰−これが最善の表現法かどうかはわかりませんが、2枚の歩が謎解き風でそれなりに面白かった。

☆たくぼんさんらしい逆算(?)とは言えそうです。



09-08 若林
  09-08 若林 協力詰 31手
 
             
               
                 
                 
                 
                 
                 
                 
 

12歩 21玉 11歩成 31玉 21と 41玉 31と 51玉 41と 61玉
62歩 71玉 61歩成 72玉 62と 81玉 72と 92玉 82と 同と
84桂 81玉 92桂成 71玉 81圭 61玉 51と 62玉 61と 72玉
71圭 まで 31手

若林−2枚目の歩をいつ使うか、という軽い謎かけ。

☆と金で追っていくのは必然ですが、どこまで追うかを見極めなければ難問となりかねません。

もず−詰め上がりを決め打たないと、と金を41で止めておく手順は見えないですね。

隅の老人B−最初は、調子に乗って行き過ぎる。桂の取り方が巧妙です。

☆逆に、その辺の見極めが着いた人には物足りなく感じられたようです。

榎○−詰あがりが見えれば簡単。

小峰−手順が限定出来そうな展開を探していったら、そのまま詰んでしまいました。

たくぼん−小奇麗な初形は収穫だが、手順はよく見る感じがざんねん。

☆05とは違って、91とは金には出来ませんね。



09-09 森隼人
  09-09 森隼人 協力詰 37手
 
                 
                 
                 
                 
               
       
             
           
         
 

48と 39玉 38と 同玉 28と 39玉 38と 29玉 39と 18玉
28と 19玉 18と 29玉 19と 38玉 28と 47玉 37と 48玉
47と 38玉 37と 28玉 27と 38玉 37と 48玉 47と 38玉
48と 28玉 29歩 27玉 38と 17玉 28と まで 37手

−「玉歩と」で三種類ということでお許しください。新人らしく35の歩が無頓着です。

☆と言うことですが、実は作者は「新人」ではありません。

たくぼん−森茂氏のご子息? 35歩は涙ながらの配置とお見受けするが、手順はなかなかです。最短順を探すには結構頭を使わないといけない。

☆「第4ペンネーム」だそうです。構図・作風から正体は推測できるのでは?

隅の老人B−最初に箱を掃除して、と金と歩での詰上がりを考える。

榎○−中編のパズルのように見えるが、すいすい解けて気持ちいい。

若林−軽いひよこ密室。

小峰−見た目も中身も豆腐の密室というか、崩れ易そうな崩れ難いような、何とも不思議な感覚でした。

もず−部品のような手順。駒種に制限がなければ飛び道具を導入して本格的な密室ものにするのでしょうね。

☆作者としても戯作のつもりでしょう。

−歩以外の駒を使えばもっと手数は延びるのですが。19とは邪魔駒のつもり。



09-10 神無七郎
  09-10 神無七郎 協力詰 53手
 
               
             
         
           
             
               
             
           
         
 

19と 同玉 18と 同玉 19歩 17玉 18歩 同と 16と 27玉
17と 28玉 18と 同玉 19歩 17玉 18歩 16玉 17歩 15玉
16歩 同と 14と 25玉 15と 26玉 16と 同玉 17歩 15玉
16歩 14玉 15歩 13玉 14歩 同と 12桂成 23玉 13圭 24玉
14圭 同玉 15歩 13玉 14歩 12玉 13歩成 11玉 21歩成 同玉
32歩成 同玉 22桂成 まで 53手

七郎−投稿が少ないとのことなので急遽でっちあげました。
と金と桂による縦追い趣向。3サイクル目を入れられたので投稿する気になりました。

☆即製とは思えない見事な出来栄えで、好評が集まりました。

若林−ひたすら22桂成をめざす為に駒をさばいていく。適度に紛れもあって、綺麗な「やさしいフェアリー長編」。

隅の老人B−趣向に気付けば、難しくはない。楽しく玉を追いつめる、こんな協力詰が大好き。

榎○−鶯図式で趣向を使って上っていくのは一本道とはいえ、凄い。

☆2筋の桂の消し方が巧妙ですね。「鶯図式」という評も目立ちました。

たくぼん−鶯図式の見事な趣向作。収束作りは苦しまれたようですね。

もず−厳しい条件の中でもきっちりと趣向を入れてくるのがさすがです。
収束の非限定を取り除くのが大変だったのではないかと思いますが、両王手を使ってうまく詰め上がりましたね。

☆4筋の配置等に苦しさが感じられますが、よくまとまったものです。

小峰−鶯図式からどんどん捌いて行く(?)趣向作。
あの企画でも七郎さんの長編趣向が頼みの綱ですので、これを見てちょっと安心しました。

☆「あの企画」については、小峰氏の総評をご参照ください。



総評など

隅の老人B−解けただけでもメールと頑張っていたら、28日に遂に全問解けたよう。
苦労したのは、9番を除いては中長編よりは短編で、特に合駒問題は難しかった。

たくぼん−過去最も易しい作品展といえるかも。協力詰の楽しさを知っていただく上で最適な難易度で、 初めての人にもどんどん解答をいただけるのではないでしょうか。

若林−見事なまでに使用駒が偏っていたのが印象的でした。易しい協力詰が並びましたが、こういう回も悪くないと思います。  願わくば解答者が増加していると良いのですが。

☆そう期待していたのですが・・・。

もず−今回は条件が厳しくて、全力を出しきれない雰囲気があったかなと思います。
その中で、面白い趣向手順をきっちり組み立てられる七郎氏はさすがだと感じました。

榎○−全体的に簡単。パズル感覚で楽しめる。でも二色や一色もあるとはちょっと不服ですが・・・。

☆ご厚意による投稿作品を捨てるに忍びなかったもので・・・。

たくぼん−森茂氏の作品が無いのは寂しいことです。

小峰−隠れ課題という程でもないでしょうが、今回は清涼詰が多いと感じました。本企画の初回テーマが清涼詰で、その時は全然集まらなかった様子。  何とも皮肉ですね。
故・森茂氏は九州の重鎮でもありました。追悼作品展の担当を出来る範囲で頑張りたいと思いますので、何か提案があれば遠慮なくお申し付け下さい。

☆森氏のご逝去につきましては、残念の一言です。遺作集についても何らかの協力をしたいのですが、多忙につき思うに任せません。
今回の結果発表も遅れてしまいました。重ね重ねお詫びいたします。



リンク
おもちゃ箱 - 詰将棋メモ 2006年08月10日