森茂追悼作品展(解答編)

解説・小峰耕希

表紙出題 出題図

神無太郎 虫食い算
 □□+□□+□□+□□+□□+□□+□□+□□+□□
= □+□+□+□+□+□+□+□+□+□
解答
10+10+10+10+10+10+10+10+10
=9+9+9+9+9+9+9+9+9+9

正解者6名

はじめに

解説 表紙出題

橋本
表出数が一つもない、いわゆる「完全虫食い算」ですね。詰将棋で 言えば、無仕掛図式でしょうか。“解図時間=□を数える時間”ですが、たまにはこんな遊びも必要。森氏も年賀状などでは「戯作」を見せてくれました。
市村
上段はMin下段はMax、文句なしの完全作です。
真T
初めて虫食い算を解きました。初めてにはこれくらいの難易度がベストです。
伊達
四角の数を数え、考える。解答が見える。この時間8秒。みえみえといえばそれまでですが、こういう感じで虫食い算の可能性が増えていくのかも。
北村
最小と最大。さすがにこれは個人的には低評価。原材料レベルでしょう。先に(□+□)×(□+□)×・・・=□・・・□を見ているせいかもしれません。
冬眠蛙
何も制限がなくて限定できているのが狙いでしょうか。やさしすぎるような気もします。

解説 Aコース

A1 たくぼん
協力詰 51手
たくぼん作 協力詰51手 図面

正8

18歩 27玉 28歩 37玉 38歩 47玉 48歩 57玉 58歩 67玉
68歩 77玉 78歩 (*1)87玉 97飛 78玉 98飛 77玉 97飛 68玉
98飛 67玉 97飛 58玉 98飛 57玉 97飛 48玉 98飛 47玉
97飛 38玉 98飛 37玉 97飛 28玉 98飛 27玉 97飛 18玉
98飛 17玉 97飛 27歩 18歩 同玉 19歩 28玉 98飛 17玉
18歩 迄 51手。

  • 規則的な往復趣向。
作者
くるくる級です。
市村
初形の綺麗な飾り駒に、俄然、食欲が湧いて来ました。
  • たくぼんさんが手順を作り、太郎さんが整形を施した作品です(A2も同様)。
真T
87歩が邪魔駒なんですね。なかなか気づきませんでした。
  • 87歩を放置すると、98飛が固定されてしまうために手が続きません。往路の目的はここにあります。
伊達
歩の連打はわかるが、その後に出現する玉鋸にびっくり。
途中図(1) 14手目87玉 迄
隅の老人B
一見、突き歩、やっぱりね。易しいが、趣向が楽しく、収束も上手いもの。たくぼんさんは、仕事はしているのかな、何時寝るの?
  • 飛の横効きと歩を駆使して詰める他無いので、▲98飛18歩△17玉27歩型を目指すのが復路。
詰上図 51手目18歩 迄
  • 他にも詰形が無い訳ではありませんが、盤の端を利用するこの形が最も効率的なので、概ね解答者にとってはわかり易かったようです。
  • 還元玉にもなっていて、“くるくる”としては標準クラスでしょう。
冬眠蛙
詰上りを見つけられたので助かりました。
北村
素直な歩での送り。
橋本
手順も詰上りも予想通りで、気持ちよく解図に入れました。A2と入替えたのは正解だと思います。
  • 自力解者は今回最多の8名。担当の期待以上に客寄せ効果を発揮して下さいました。
A2 たくぼん
協力詰 41手
たくぼん作 協力詰41手 図面

正6

18歩 28玉 29歩 38玉 39歩 48玉 49歩 58玉 59歩 57玉
(*1)58歩 68玉 69歩 78玉 87歩 同玉 97飛 78玉 98飛 67玉
97飛 58玉 98飛 47玉 97飛 57歩 48歩 58玉 98飛 (*2)68歩
59歩 67玉 97飛 77歩 68歩 同玉 69歩 78玉 98飛 67玉
68歩 迄 41手。

  • 見た目はA1と似ていますが、手順は全く異質な不規則趣向。
冬眠蛙
収束が違うのかなあ…。
北村
全くわからず。1筋まで戻ると手数オーバーか。しかし歩の数も少なくうまく詰ませられませんでした。
隅の老人B
A1と似ているので、易しいと思ったら、大間違い。10手目に68玉と応じるし、詰む位置は1筋方面と追っかける。何日要したやら、苦労しました、草臥れました。
  • こちらも17玉型で詰ませようとすると、40手台後半という見方によっては短縮出来そうな手数が掛かってしまい、早速落し穴第1弾に嵌る事になります。
  • では中央での詰上りを目指せば簡単なのかと言うと、そうでもありません。
市村
1筋での詰上りは無理と速断出来ましたが、それからが大変、苦吟の連続でした。
伊達
どの筋で詰めあげるのが一番手数が短いかを、レポート用紙に書き込んでまでして考えました。そのレポート用紙が先生に見つかって(授業中にしていたわけではないのでご安心を。)「これ何?」。説明するのに四苦八苦。説明しようとすると案外難しいものですね、これは。
  • 結局57・77に歩を発生させて67玉型で詰めるのですが、57歩合をするためには一旦47玉型にする事が必要で、よって往路で前もって5筋の歩だけ突いておく事が必要になる――という伏線が入っているのです(落し穴第2弾)。
途中図(1) 11手目58歩 迄
  • まだあります。普通に追うと一歩不足!(落し穴第3弾)
橋本
7段目の2枚の歩合で壁を作るのは予想できたのですが、8段目の歩合で1歩を稼げるというのが意外と盲点で、かなり考えさせられました。この手順に何枚もの紛れのヴェールを被せれば、森氏本人の作と見紛うような作に発展させられる素材だと思います。
  • 担当はこれに引っ掛かって降参してしまったという…。
途中図(2) 30手目68歩 迄
  • 見た目以上に難所が多く、殆どの解答者が苦戦した本局ですが、例外が1名。
真T
A1を解いてる時に考えた詰上がりだったのですぐ解けましたが、それでも58歩の味はいいですね。
  • A1で悩んだ成果か(笑)。
詰上図 41手目68歩 迄
  • ところで本局には1つ触れておかなければならない点があります。実は初形の48と68の歩は紛れ専用の配置なのです。
  • ただ本局の場合“破調の強調”という大義がありますし、あった所で然程気にならないと思われる(実際解答者からの指摘は無かった)ので、減点以上の付加価値があると見て良いでしょう。
A3 小林看空
協力詰 91手
小林看空作 協力詰91手 図面

正7

72歩 81玉 71歩成 91玉 92歩 82玉 81と 72玉 71と 同玉
72歩 81玉71歩成 同と 91歩成 82玉 81と 72玉 71と 82玉
81と 92玉 91と 82玉 92と 71玉 72歩 同と 82と 同と
72歩 81玉 71歩成 91玉 81と 92玉 91と 同玉 92歩 81玉
91歩成 71玉 81と 72玉 82と 61玉 71と 62玉 61と 72玉
71と 82玉 81と 92玉 91と 82玉 92と 71玉 72歩 61玉
71歩成 62玉 61と 72玉 62と 同と上 82と 61玉 72と 51玉
62と 同と 52歩 61玉 51歩成 (*1)71玉 72歩 81玉 71歩成 91玉
92歩 82玉 81と 同玉 91歩成 71玉 61と 82玉 81と 72玉
71と右 迄 91手。

  • 「姫」シリーズ最新作。
北村
必死にと金をはがすも手数オーバー。全部はがさなくてもいいのかとも思ったのですが、実際にどう詰ますかはよくわからず。
市村
6筋に2歩禁で、作品の風格、難解度が格段に昇華。素晴らしい名作。
  • 今回は6・8筋の二歩禁を利用しての凝ったと金剥しが見所です。
橋本
5手目から14手目の手順を第一感で指せる人間は地球上に存在しないと思う。と金と歩だけで、この妙手順を紡ぎ出した手腕は正に驚異的。傑作です。
たくぼん
5手目8一と以下追ってしまい苦しみました。9二歩が打ち難い1手。詰上りの型は予想できるのになかなか91手では収まりませんでした。しかしこの形から91手とは素晴らしい。
  • ▲72歩92歩△81玉の形を作って、71歩成〜91歩成以下1枚剥せる。
  • などと気付くのは後からで、折角の拠点を消すかの如きこの序奏は不利感抜群。大変好評でした。
  • 中盤にも幾つかポイントはあるのですが、全て書くと大変なので飛ばしまして、76手目の局面。
  • ここが最後の分かれ道です。72歩以下62とを壁として利用しつつ収束するのが正着なのですが、61と以下惰性で剥し過ぎると迷宮入りです。
隅の老人B
解図の一日目は、詰上がり図をいろいろ考える。二日目も思い浮かばず。三日目に、これかな?に向かって、闇雲流の開始。解答書きには、途中の手順は忘れるし(ボ7 ケ)、一週間の難苦行、愛用の駒もすり減った。
途中図(1) 76手目71玉 迄
詰上図 91手目71と右 迄
真T
なぜ解けたのか分からないのですが解けてしまいました。当たり前と言えば当たり前なのですが、限定されているのがすごいですね。
伊達
手順より何より、まずこれが唯一解だということに驚きます。そして6五と8五に歩を配置したことによって歩を全部使ったということに驚きます。題名について、「森姫」というのは森氏を意識したということ・・・なのかなぁ?
作者(解答時)
森姫図式で大満足。太郎さんアドバイスありがとうございました。
  • 「アドバイス」とあるように、本局は数度の改訂を経て出題図が生まれました。その過程がなかなか面白いので、当時のやりとりと合わせて収録致します。
    小林
    森茂氏追悼作品『森姫』忘れないうちに投稿しておきます。100手越えたらまた考えますが、当面は保険をかけてこの作で。。
    協力詰 83手
    小林看空作 原案(1) 協力詰83手 図面
    小林
    『森姫』二手延びました。形は全然違いますが、こちらの方が形がいいのでこれで決定かな。。
    協力詰 85手
    小林看空作 原案(2) 協力詰83手 図面
    小林
    二手逆算しました。だんだんシンプルになってきました。面白いですね。
    協力詰 87手
    小林看空作 原案(3) 協力詰83手 図面
    神無太郎
    91とを持駒にすると91手になるようです。
    小林
    なるほど。では↓の図(担当注、出題図)で。ますます面白いというか、不思議ですね。あと9手で100手越え!?

  • これをほぼリアルタイムで見る事が出来るのも担当の特権ですね。

先例紹介

I. 加藤徹 詰パラ '72.06
協力詰 153手 (非限定有)
加藤徹作 詰パラ'72.06 協力詰 153手(非限定有) 図面
  • “密室と金剥し”としては一番最初に発表された作品。非限定はありながらも行ける所まで行く辺りに、良くも悪くも時代を感じます。
II. 神無七郎 詰パラ '96.12
協力詰 125手
神無七郎作 詰パラ'96.12 協力詰 125手 図面
  • “1枚だけ残して収束”にも先例がありました。「第6回神無一族の氾濫」にて出題された七郎さんの作品です。序盤の技巧度では「森姫」の方が上でしょうか。
A4 神無太郎
協力千日手 56手

正6

39銀 29玉 38銀 28玉 29銀 39玉 28銀 48玉 59銀 38玉
39銀 29玉 38銀 39玉 48銀 28玉 39銀 18玉 29銀 19玉
28銀直 18玉 19銀 29玉 38銀 39玉 28銀 48玉 39銀 59玉
48銀 68玉 59銀 79玉 68銀 88玉 79銀 98玉 89銀 99玉
88銀直 98玉 99銀 89玉 78銀 79玉 88銀 68玉 79銀 59玉
68銀 48玉 49銀右 39玉 48銀 38玉 迄 56手。

たくぼん
趣向手順がいい感じです。森さんにちなんだ作品と言う気がします。
北村
ばか千日手は苦手です。銀4枚も絡めて動かしては頭がくちゃくちゃに。うまく進んでいるのかどうかが途中わかりづらいのもつらいところです。
  • 理屈っぽく(というよりは担当の解図過程ですが)書いてみると、
    1. 最後の4手は、出題図から玉と48銀が入れ替わった形から、49銀右、39玉、48銀、38玉迄しかない。
    2. 更に逆算を試みると、68銀が左辺から玉を追ってきた可能性が高い。
    3. という事は、順算で玉が左辺に行く方法を考えれば良い。
    4. 銀が2枚並ぶと“通せん坊”状態なので、一間空けて出動させるしかない。
    5. 78銀をいきなり動かすのは不可能なので、とりあえず48銀と68銀で右辺に追ってみる。
    6. 以下流れで作意順に辿り着く。
    …でわかります?
隅の老人B
目的は元に戻すこと、創る方も、解く方も暇だね。良くやるよ。これが、率直な感想です。右辺から左辺へ、上手く出来ている、感心。
市村
銀2枚で1筋に追い込む手順は、心理的抵抗が強い。
真T
なかなか玉が左に行ってくれず苦労しました。左と右で同じ手順を繰り返すのがいいですね。
  • ところで、森さんはネット上で次のような作品を発表なさっていました。
森茂 JEWEL BOX #01
協力千日手 48手
森茂氏作 JEWEL BOX #01 協力千日手 48手 図面
作者
投稿しておきます。もはや推敲しようがないので。JEWEL BOX #01 の森さんの作品にインスパイアされてできたものです。
伊達
第一回ジュエルボックス第12番の発展? それだったら、森氏にもお見せしたい作品ですね。5八銀が不動なのも同じだし。
橋本
JEWEL BOX #01 の森茂氏の作品を思い出させる作ですね。森氏もきっといろいろ試したはずですが、なぜこの形で出さなかったのか不思議です。左右対称の手順にこだわったからでしょうか? 58銀が不動で、角でも良いという弱点も共通していますが、初形の美しさでは、本図に軍配を上げます。
  • いろいろな意味で故人を偲ばせる作品でした。
Aコースまとめ
橋本
私見では、森氏の本領が最も発揮された分野は、協力詰・協力千日手・連続詰だと思います。今回の追悼作品展には連続詰系の作品はなかったわけですが、Aコースに協力詰・協力千日手が揃ったことで、故人を偲ばせる本作品展の意図は成功していると思います。内容的にも充実していて、このコースの作品を解くだけでも、フェアリーの素晴らしさと、故人の残した足跡の大きさを感じることが出来ると思います。
  • 橋本さんは各コース毎に総評を書いて下さいました。有り難うございます。
【Aコース全解者】(6名)

橋本孝治 真T 伊達悠 隅の老人B たくぼん 市村道生

解説 Bコース

B1 もず
最悪詰 31手
もず作 最悪詰 31手 図面

正6

32馬 11玉 33馬 21玉 43馬 11玉 44馬 21玉 54馬 11玉
55馬 21玉 65馬 11玉 66馬 21玉 76馬 11玉 77馬 21玉
87馬 11玉 88馬 21玉 98馬 11玉 99馬 21玉 11馬 同玉
22桂成 迄 31手。

詰上図 31手目22桂成 迄
  • ※同一局面2回で千日手成立。細則は出題稿参照。
伊達
何もない所へ行く馬鋸がいいです。手数も大きいヒントになりました。
北村
同一局面に戻れないために馬鋸になるというのが面白いと思いました。なんとか往復をとか考えるのですがこれがうまくいかないんですよねぇ。
作者
森茂氏の作品を参考に最悪詰を作ってみようと思ったのですが、別の方へ展開してしまいました。詰パラ27番(担当注、詰パラ’01.09、103手)で千日手がらみの手順があるのでその部分に関係がある、というのは強引ですね。
森茂 詰パラ '01.09
最悪詰 103手
森茂氏作 詰パラ'01.09 最悪詰 103手 図面
作者
(中略)ご覧になってわかるように、変化手順がほとんどない完全な原理図です。千日手ルールにより馬が同じ地点に来ないようにしなければならないので、馬鋸で遠ざかるしかなくなるという単純な原理です。本当は持駒に歩などを加えて合駒を出したりしたかったのですが、検討が追いつかなかったため、単純な図を出すことにしました。
  • もう一捻りあると本格的な作品に昇華しそうなんですが。
小林
法則問題のサンプル。
真T
こんな簡素な形から馬鋸が出てくるなんて嬉しくなっちゃいます。
たくぼん
この作品があったのでスムーズに解図に入れました。1番バッターに最適でした。
隅の老人B
ルールが、今一理解できない。
  • やはりルール説明が粗かったようです。ごめんなさい。
橋本
同一局面2回で千日手の設定なので簡単に解けましたが、これが3回以上の設定だったら、最長経路探しが大変で、詰将棋というより数学の問題になっていたでしょうね。ところで、千日手に関するルールの設定に関してですが、問題は千日手を利用することを隠そうとするから起こるのであって、千日手を利用することを明示すれば、何も問題は起こらないと私は思います。例えば次のように決めてしまってはどうでしょう?
  1. 千日手を禁手とする場合は、「千日手禁」と明示する。
  2. 千日手禁を適用する場合、特に指定がなければ、王手に限らず、すべての着手に千日手禁を適用する。特定の着手にのみ千日手禁を適用する場合は、「攻方千日手禁」、「受方千日手禁」、「王手千日手禁」…、のように適用範囲を明示する。
  3. 千日手の成立条件は特に指定がなければ同一局面2回とする。それ以外の場合は、成立条件を明示する。
  4. その他(他の禁手との優先度設定など)の条件がある場合は、それを明示する。
昔、千日手の条件が「同一手順3回」から「同一局面4回」に変わったとき、作意が成立しなくなった作品がありましたが、上のような設定にしておけば指し将棋の方のルールが例え変わったとしても、何ら影響を受けずに済むので、何の心配もなく千日手ルールの利用ができると思いま す。
  • 貴重なご意見に感謝しつつ言い訳させて頂きますと、出題稿の「各作品に関して」で敢えて注意を促したように、千日手利用を隠す意図はなく、「千日手禁」と明示するという発想が担当に無かったのが真相です。
B2 北村太路
最悪詰 23手
北村太路作 最悪詰 23手 図面

正5

25角 47馬 38飛 69玉 58銀 同と 59金 78玉 69金 同と寄
79香 (*1)88玉 89歩 97玉 98歩 86玉 78桂 77玉 86桂 (*2)78金
同香 67玉 77金 迄 23手。

  • (*1) 87玉は、88歩、97玉、89桂。
  • (*2) 78飛合は、同香、67玉、97飛、77合、同飛で2手長駒余りとなり、“玉方最善”に反する。
詰上図 23手目77金 迄
小林
一式持駒を買う。
橋本
いやー、このルールでいきなり持駒一式の使用駒趣向が見られるとは思いませんでした。明らかに「試作」のレベルを越えていて、ひょっとしたら将来「最悪詰ブームの発端となった作品」とか呼ばれるかもしれません。
  • と、某一族絶賛の本局ですが、
真T
持駒7種の最悪詰。初手が広すぎると思ってたらよく見たら王手がかかってました。
たくぼん
7種持駒と言う条件はかなり厳しいようで、手順がややぎこちない感じですが、十分楽しめました。
  • という意見も。
  • そして一番辛口なのは勿論…。
作者
終盤の持駒桂香歩から逆算して持駒金銀桂香歩になり、それだったらとさらに無理やり逆王手で持駒一色にしました。最悪詰は攻方の選択肢が狭い方がいいので、攻方持駒の種類がたくさんあれば面白いだろうと思ったのですが、こんな絶対手から入ったのでは価値0です。初手に七種すべて打てる可能性があり、そのうち一種が最長になるので正解というのを創りたいのですが非常に難しいです。
22手目の合駒が飛でも9七飛、7七合、同飛までで2手長くて詰み、ルール上は最善でないので不正解ですが、できれば飛合できないようにしたかったです。
  • 各氏のコメントも見る限り、難条件達成に最も近いのはこの人のようです。
B3 北村太路
最悪詰 61手
北村太路作 最悪詰 61手(早詰) 図面

全員正解

69角 58桂成 同角 (*1)47桂 同角 36桂 同角 25桂 同角 同と
26桂 15玉 27桂 16玉 28桂 17玉 29桂 28玉 78飛 (*2)68歩
同飛 58と上 同飛 48歩 同飛 38歩 同飛 19玉 18飛 同玉
19歩 27玉 28歩 26玉 27歩 35玉 36歩 46玉 47歩 56玉
89角 47玉 56角 48玉 98飛 88銀 同飛 78銀 同飛 68銀
同飛 58銀 同飛 同と 59銀 同と寄 49銀 同と左 39銀 同香成
37銀 迄 61手。

詰上図 61手目37銀 迄
  • 3種4連合の冒険作でしたが、いろいろな早詰がありました。以下に主要なものを列挙します。
  • (*1)から PC検討で検出。

    36歩 同角 25歩 (A)同角 同玉 17桂 34玉 35歩 44玉 45歩
    54玉 75歩 87桂 同角 45玉 54角 55玉 47桂 66玉 96飛
    76歩 同飛行 迄 25手。

    • (A)補足

      15歩 同玉 27桂 16玉 25角 17玉 18歩 28玉 78飛 48銀
      同飛 19玉 28銀 29玉 47角 38金 同角 同香成 19金 迄 25手。

  • (*1)から 小林さん指摘順。

    36桂 同角 25桂 同角 同玉 17桂 16玉 28桂 27玉 19桂
    38玉 78飛 68と 同飛 48と 同飛 同玉 49歩 47玉 48歩
    46玉 47歩 55玉 56歩 45玉 46歩 56玉 89角 55玉 95飛
    46玉 45飛 迄 35手。

  • (*2)から

    68と 同飛 38銀 同飛 同玉 47銀 同玉 48歩 46玉 47歩
    56玉 89角 以下作意還元。

  • 特に(*2)が、歩連合の機構の破綻を意味している点で致命的。作者の希望も勘案して全員正解とさせて頂きました。
作者
森氏の四桂詰の作品(担当注、詰パラ’01.09、31手)からの連想で終盤の四銀連打合を思いつき、その後不完全な四歩連合、四桂連合をつけました。虫が良すぎたのですが、こうなればいいなという願望から検討が甘くなり皆様にご迷惑をお掛けしました。大変申し訳ありません。生飛角の威力がわかっていなかった、というか最悪詰のことがわかっておらず少しナメていた感があります。本当にすいませんでした。
森茂 詰パラ '01.09 早詰
最悪詰 31手
小林
四桂合など意欲作と思うが。
橋本
最初、桂の連合いにビックリ。最後は金追いに違いないと思ったのですが、うまく繋がりませんでした。何とか詰めることはできましたが、作意の推測には失敗しました。
たくぼん
早詰作についてはかしこでは仕方ない部分もあるでしょう。ただ解答者側からいえば不詰ではないので全員正解にする必要はないと思います。詰める順を書いてきた解答者を正解にすればいいのではないでしょうか? すでに解いていたのに“早詰があったので全員正解にします”ではちょっと納得できない部分があるのも確かです。(私だけかもしれませんが)
  • ご意見感謝。前述の通り主要部分が潰れていたのでこのような措置を取りましたが、正しい判断をしたのかどうか、僕自身も自信の無い所です。
  • 改めて検討不足をお詫び致します。
B4 北村太路
最悪詰 85手
北村太路作 最悪詰 85手(早詰) 図面

正4

(*1)28金 同銀生 19歩 17玉 18歩 16玉 17歩 15玉 16歩 14玉
15歩 13玉 14歩 同銀 12桂成 同玉 11桂成 同玉 21歩成 同玉
31香成 同玉 41歩成 同玉 44香 同角 42歩 51玉 41歩成 61玉
51と 同飛 71歩成 同玉 72歩 81玉 71歩成 91玉 81と 92玉
82と (*2)同銀 84桂 93玉 92桂成 94玉 86桂 同歩 93圭 95玉
64歩 (*3)55角 94圭 96玉 95圭 97玉 96圭 98玉 97圭 99玉
98圭 89玉 99圭 79玉 89圭 69玉 79圭 59玉 69圭 49玉
48金 同金 59圭 39玉 49圭 29玉 39圭 19玉 29圭 同銀生
36香 37香 同角 18玉 19香 迄 85手。

  • (*1)で19歩は、同玉、36香、28歩以下。
詰上図 85手目19香 迄
橋本
今度は周辺巡り、しかも2手目の伏線付き! 未開のルールで、大作や条件作を連発する最近の北村氏の創作力は往年の出口信男氏の域に迫っていると言っても過言ではありません。ちなみに私は最初解いたときには、64歩 55角の応酬を見落としました。手数表示がなければ誤解続出の作だと思います。
  • こちらも意欲作だったのですが、PC検討の結果、想定外の手順で早詰んでいました。
  • (*2)から

    同玉 74桂 83玉 82桂成 94玉 86桂 84玉 83圭 75玉 64歩 65歩 同飛 86玉 66飛 76歩 同飛 同玉 67銀 86玉 87歩 97玉 98歩 88玉 55角 66歩 同角 77歩 同角 89玉 78銀 同玉 79歩 87玉 88歩 98玉 99歩 同玉 87歩 88金 同角 89玉 99金 迄 83手。

作者
こちらも中盤5五の飛が動き出せる展開でこうなっては詰まないだろうと検討を打ち切ったあとの部分で詰ませられる早詰がありました。申し訳ありません。
  • 出題前に僕が気付いていれば良かった訳で、本当に申し訳ない限りです。
  • 現在作者は修正を試みているそうです。B3よりはずっと可能性がありそうですが、手数が手数なので完全を証明するには相当時間が掛かりそうです。
  • また作意の意味付け自体が破綻した訳ではないので、B3のような措置は取りませんでした。
たくぼん
ところどころにあるポイントが楽しい趣向。最悪詰の将来を期待させてくれる作品と思います。
真T
玉の周辺巡り、狙いがわかってからはすぐ解けましたが楽しめました。余詰めがあるとのことで残念です。
小林
あれ二手長い。。数え間違い?銀生が最後に効いてくる。
  • (*3)で96玉、95飛、同玉以下作意に還元していたのが原因でした。惜しくも誤解。
作者
森氏の詰パラフェアリー初登場作が(担当注、詰パラ’72.12)ばか詰周辺巡りだったようでしたので最悪詰で周辺巡りを創れないか取り組みました。
森茂 詰パラ '63.6
かしこ詰 65手
森茂氏作 詰パラ '63.6 かしこ詰 65手 図面
森茂 詰パラ '72.12
協力詰 73手
森茂氏作 詰パラ '72.12 協力詰 73手 図面
森茂 詰パラ '06.11 早詰
協力自玉詰 94手
森茂氏作 詰パラ '06.11 協力自玉詰 94手(早詰) 図面
  • 森さんは周辺巡りを好んで創作なさっていたようで、担当が把握しているだけでも3局あります。
Bコースまとめ
市村
不慣れなルールなので、歯が立ちません。今回は、失礼いたします。
  • 担当も不慣れ、どころかこのルールとは初対面同然で、解説の仕方がわからないのが大問題。実際変化紛れに殆ど触れてないし…。
橋本
不完全作はあったものの、これだけ質の高い作品が出題されれば、誰もが最悪詰の持っている可能性の大きさを感じさせられるでしょう。散発的な例外を除いて、長い間省みられなかったこのルールですが、この特集をきっかけに大ブレイクしそうな予感がします。
  • Bコースは、橋本さんと作者のコメントの著しいギャップが印象的でした(笑)
【Bコース全解者】(4名)

橋本孝治 真T 北村太路 たくぼん

解説 Cコース

C1 神無七郎
協力詰 1001手
神無七郎作 協力詰 1001手 図面

正4

  • 最初から作意手順を羅列してもわかり難いと思うので、持駒増幅機構と最終目的の2つに分けて解説する事にします。

1) 持駒増幅機構

  • 本局の持駒増幅機構は、昨夏「第25回神無一族の氾濫」にて出題された森さんの作品が元になっています。
森茂 詰パラ '06.06
協力詰 1965手
森茂氏作 詰パラ '06.06 協力詰 1965手 図面
  • この作品の37手目〜60手目をご覧下さい。
36手目46玉 迄

47歩 45玉 15龍 35香 46歩 34玉 35歩 33玉 34歩 42玉
33歩成 同玉 37香 36歩 同香 35歩 同香 34歩 同香 同玉
14龍 35玉 36歩 46玉

60手目46玉 迄
  • 24手掛けて持ち歩を1枚増やした訳ですが、この手順にどのような意義があるのでしょうか。同年9月号に掲載された、神無七郎さんの解説を一部引用します。

    従来、香を利用した持駒増幅は、香で香合いを稼ぐ方式だったため、非限定がつきものでした。本局では龍で香合いを稼ぐ2段階式の変換を用いているため、非限定が消えています。


  • この森さんの作品では、「歩2→香→歩3」の2段階の変換をする事により、24手サイクルの持駒増幅 を完全限定で実現したのが特長でした。
  • この持駒増幅機構をもう一工夫したのが七郎さんの次の作品。(Onsite Fairy Mate (http://www.abz.jp/~k7ro/) 第115回トップページ出題作品)
神無七郎 OFM '06.10
協力詰 597手
神無七郎作 Onsite Fairy Mate '06.10 協力詰 597手 図面
  • 89手目〜152手目をご覧下さい
88手目28玉 迄

82馬 37香 29歩 27玉 28歩 36玉 37歩 26玉 27歩 15玉
(イ)19香 18歩 同香 17歩 同香 16歩 同香 同玉 17歩 27玉
72馬 37玉 38歩 28玉 82馬 37香 29歩 27玉 28歩 36玉
37歩 26玉 27歩 15玉 (ロ)16歩 14玉 15歩 13玉 14歩 22玉
13歩成 同玉 19香 18歩 同香 17歩 同香 16歩 同香 15歩
同香 14歩 同香 同玉 15歩 25玉 26歩 同玉 27歩 同玉
72馬 37玉 38歩 28玉

152手目28玉 迄
  • 森さんの作品と同じように持ち歩を増やしたいのですが、112手目(イ)の所で16歩と打っても持駒は増えず、千日手に陥ります。
  • ここは、17歩を発生させて、再び15玉となった局面で16歩と突く(ロ)のが巧い手順。15歩→17歩の歩下げによって、歩1枚節約したのと同じ効果がある訳です。
  • この機構改良により、森作では「歩2→香→歩3」だったのが、七郎作では「歩4→香→歩3→香→歩5」になり、手数が24手から64手へと約2.7倍に!
  • 如何にも超長編向きなのですが、OFM出題作では歩を稼ぐだけ稼いだ後は左辺で収束してしまうため、手数はたった(?)600手弱。森作のように剥しと掛け合わせるとか、或いは「寿限無」型の再帰手順と組み合わせる等の応用が期待されていました。
  • そして今回「シェエラザード」が取った構造は前者(持駒増幅×剥し)です。
  • 前置きが酷く長くなりましたが、ここから本手順の解説に入ります。<>内の数字が手数です。

    83歩生 76玉 94馬 66玉 93馬 67玉 68歩 58玉 94馬 48玉
    93馬 49玉 94馬 39玉 93馬 49玉 94馬 48玉 49歩 47玉
    48歩 46玉 47歩 45玉 46歩 44玉 45歩 43玉 44歩 52玉
    43歩成 同玉 44歩 同玉 45歩 55玉 56歩 同玉 57歩 同玉
    93馬 58玉 <42手>

  • ここまでが序。39歩を残すと剥しに入れず、52歩を残すと持駒を増やせません。
42手目58玉 迄

{ 『94馬 67香 59歩 57玉 58歩 66玉 67歩 56玉 57歩 45玉
49香 48歩 同香 47歩 同香 46歩 同香 同玉 47歩 57玉
93馬 67玉 68歩 58玉』=『45歩→47歩』(24手)
94馬 67香 59歩 57玉 58歩 66玉 67歩 56玉 57歩 45玉
46歩 44玉 45歩 43玉 44歩 52玉 43歩成 同玉 49香 48歩
同香 47歩 同香 46歩 同香 45歩 同香 44歩 同香 同玉
45歩 55玉 56歩 同玉 57歩 同玉 93馬 67玉 68歩 58玉 }=『持駒増幅』(64手)
<106手>

  • 前置きでも述べたように、64手一組の『持駒増幅』を行う事により、攻方の持ち歩が1枚増えます。

    『持駒増幅』×4 <362手>

362手目58玉 迄
  • さて、順調に来た人でも、多分この辺りで手が止まったと思います。
  • 折角稼いだ歩の使い道、つまりどの駒を剥してどこで収束するのかが見当も付かないのです。

2) 最終目的

  • 実を申しますと、担当はここで行き詰まったまま出題稿作成期日を迎えてしまったため、結局答えをカンニングしてしまいました。
  • ではこの謎を自力解者はどう打開したのか、まずはたくぼんさんに訊いてみましょう。
たくぼん
しばらく考えていたが歩の増幅機構はOFM出題と同じなのでいいとして、収束が全く浮かんでこない。そして数日後、図をじーっと見ていたらいろいろな鍵があることに気付きました。
  1. 初手は83に歩を進める1手だが成生非限定になりそう。
  2. 63〜72に玉は行ける
  3. 29とは動かせる
  4. 77桂は浮いている
まず考えたのが玉に77の桂を取らせる→桂合させる→桂を手持ちにする→63玉、55桂以下収束させる。 というストーリー。しかし考えても考えても77桂は取れない。
次に29とを取って15辺りで収束させるというストーリー。しかしどう考えても詰型が出来ない。
香と歩だけでは詰まないということは他に何かの駒がいる。ここでハタと思い当たった。香を成らせればいい。
48香からの開き王手が浮かびました。43の空間が絶妙です。39歩を消去し、29と移動させ玉の通り道をつくりやっと開き王手を実現できました。その後収束でしたが、まず成香を鋸で引いて77の地点まで持って来ようとして手数オーバー、ここで閃きました。
初手を不成にして63から72へ追えばいいと。
  • この評ですっかり担当者は失業状態なのですが(笑)、一応整理し直してみますと、
    1. ▲93馬48香△39玉の形から、(開き王手で)43香成と成香を作れば収束の目処が立つ。72玉型で詰ませれば、初手も不成で限定出来そう。
    2. そのためには28玉に対して29歩と打つ必要がある(玉が左辺から侵入する事は出来ない)。
    3. ところが29とが邪魔で29歩が打てない。
    4. よって29と剥しを当面の目標とする。但し9段目のと金でいきなり移動合いさせるのは無理なので、一旦28に誘き出す必要がある。
  • 以下この方針に基づいて手を進めます。

    『45歩→47歩』 <386手>

    94馬 67香 59歩 57玉 58歩 66玉 67歩 56玉 57歩 45玉
    46歩 35玉 36歩 25玉 28香 同と 26歩 34玉 35歩 44玉
    45歩 55玉 56歩 同玉 57歩 同玉 93馬 67玉 68歩 58玉
    <416手>

416手目58玉 迄

『持駒増幅』×3 <608手>
『45歩→47歩』 <632手>
94馬 67香 59歩 57玉 58歩 66玉 67歩 56玉 57歩 45玉
46歩 35玉 36歩 26玉 27歩 15玉 19香 18と 同香 17歩
同香 16歩 同香 同玉 17歩 25玉 26歩 34玉 35歩 44玉
45歩 55玉 56歩 同玉 57歩 同玉 93馬 67玉 68歩 58玉
<672手>

  • これで漸くと金剥し達成です。
672手目58玉 迄

『持駒増幅』×4 <928手>
『45歩→47歩』 <952手>

  • これで準備完了!
952手目58玉 迄

94馬 67香 59歩 57玉 58歩 56玉 57歩 45玉 46歩 55玉
56歩 66玉 67歩 57玉 93馬 67玉 94馬 57玉 93馬 46玉
49香 48歩 同香 35玉 36歩 26玉 27歩 同玉 28歩 同玉
29歩 39玉 43香成 49玉 94馬 48玉 93馬 47玉 48歩 46玉
47歩 45玉 46歩 54玉 44杏 63玉 54杏 72玉 82歩成
迄 1001手。

詰上図 1001手目82歩成 迄
市村
増やした持駒の使い方を考えて居る内に、素晴らしい大妙手が閃きました。48→43への大ジャンプは、アリババの“オープン セサミ”と同様の感動でした。
真T
歩を増やしたところで目的が分からず途方に暮れていたら、15歩と29とが怪しい配置であることに気づきました。そうしたら、一気に見えました。謎解きを満喫できました。ありがとうございました。
たくぼん
かなり苦しんだ分解けたときの喜びは倍増。謎解きを充分に楽しませてくれました。とにかく駒を目一杯働かせてぎりぎりの配置で創られておりこれもまた感嘆しました。こんな作品に巡り会えてよかった。ありがとうございました。
作者
元々は森茂氏生前の最後の出題となった1965手詰に倣い、「持駒増幅」×「はがし」を目標に作り始めたものですが、初手の伏線が気に入ったので、そちらを中心にまとめてみました。
命名は有名な千一夜物語のヒロインの名前で、リムスキー・コルサコフの交響組曲の題名としても知られています。
  • 初手の歩不成から始まる本局の謎解きは実に素晴らしく、最後にそれらを束ねる985手目43香成の切れ味は抜群。そして自力解者が揃って感動・感謝の意を述べている事こそが、伏線を重視した創作方針が成功を収めた証左でしょう。
  • 同時に、本局を一点の曇りもない完璧な作品と書いたら嘘になりますので、そこにも触れておきます。
作者
「持駒増幅」×「はがし」の作品を「非限定なし」の条件下で作るのは、非常に難しいことです。1枚はがすたびに持駒の数が変化するため、手が進むにつれて、持駒増幅の回数やタイミングをコントロールするのが困難になるからです。本作でも、さまざまな「はがし」のパターンを盛り込みたかったのですが、ことごとく非限定で潰え去りました。この作品を創作した今なら、森茂氏があの1965手詰を自ら「会心作」と呼んだ理由を、理屈でなく実感として理解できます。よく「詰将棋は実際に解かないと(手順を並べるだけでは)理解できない」という言葉を目にしますが、「詰将棋は実際に作らないと(解くだけでは)理解できない」という方が、より真実に近い気がします。
  • 創作の困難を(理屈で)承知の上でですが、個人的には29との剥し方が普通に見えてしまうのは否めない所です。
  • この解説を書くにあたって、七郎さんに「この持駒増幅機構にまだ発展の余地はありそうでしょうか?」と質問してみました。それに対する回答を最後に収録しておきます。
作者
この作品の持駒増幅機構は、歩の打場所として3つの筋を利用しています。当然、4つの筋、5つの筋……と増やして行くことが考えられますが、盤の狭さや手順限定の困難さが壁となってきます。この路線で行く場合、馬を利用した持駒増幅だとどうしても幅を取るので、飛などの駒で代用する仕組みを考える必要があるでしょう。今回は時間の関係もあったのですが、持駒増幅それ自体よりも、それを利用した応用部分の方に創作の主眼を置いたので、この点については調査不足です。
(中略)
いろいろ書きましたが、持駒増幅機構それ自体も、その利用方法についても実現したことより、やり残したことの方がはるかに多いというのが実感です。
C2 TETSU
協力詰 10853手
TETSU作協力詰 10853手 図面

正2

  • こちらも作品の構造から説明する事にします。

1)「寿限無」型再帰手順

  • 本局が何故1万余手の長手数を実現したかと言えば、ひとえに「寿限無」型再帰手順のお陰です。
  • 協力詰の最長手数記録保持作品「寿限無」、そして完全限定の最長記録「龍の顎」でも利用されている有名な機構ですが、この際改めて確認しておきましょう。
加藤徹
詰パラ '75.09('76.04改訂)
協力詰 19447手
加藤徹作 詰パラ '75.09('76.04改訂) 協力詰 19447手 図面
「寿限無」
森茂 詰パラ '04.12
協力詰 12555手
森茂氏作 詰パラ '04.12 協力詰 12555手 図面
「龍の顎」
TETSU
協力詰 4137手
TETSU作 協力詰 4137手 図面
  • これはC2の原図の1つです。
  • この作品の最終目標は84成桂を剥す事なのですが、そのためには次のような形を作る必要があります。
4094手目55玉 迄

56歩 同玉 57歩 同玉 58歩 68玉 69歩 77玉 78歩 86玉
87歩 95玉 96歩 94玉 95香 同圭 同歩 85玉 86歩 76玉
77歩 67玉 68歩 56玉 57歩 45玉 (以下略)

  • このように7〜9筋の歩を2段ずつ下げ、行きも帰りも(打たずに)突く事によって歩を節約し、目的を達するのです。
4120手目45玉 迄
  • ではどのように歩を下げれば良いかですが、
  • この図は初形から持駒増幅を一通り終えた局面です(持駒増幅機構はC2と殆ど同じなので割愛)。まず7筋の歩下げを行います。
134手目55玉 迄

56歩 同玉 59香 58歩 同香 57歩 同香 同玉 58歩 68玉
69歩 77玉 78歩 67玉 68歩 56玉 57歩 45玉

  • 一足飛びに2段下げる事は出来ないので、まずは77歩→78歩。
152手目45玉 迄
  • 但し玉が8筋に行くためには79歩型でないと困りますので、次に78歩→79歩を行います。プロセスは77歩→78歩と殆ど同じで、違うのは「69歩、77玉、78歩、67玉」が「69歩、78玉、79歩、67玉」になるだけです。
  • 下の図は78歩→79歩と、その後の持駒増幅が済んだ局面。ここから86歩→87歩を目指します。
434手目55玉 迄

56歩 同玉 59香 58歩 同香 57歩 同香 同玉 58歩 68玉
69歩 77玉 78歩 86玉 87歩 76玉 77歩 67玉 68歩 56玉
57歩 45玉

  • 確かに86歩→87歩は実現しましたが、代償として7筋が79歩→77歩と逆戻りしてしまいました。
456手目45玉 迄
  • という事は87歩→88歩の前に、再度77歩→78歩→79歩をやり直さなければならない事になります。
  • その後ですが、87歩→88歩を実現した後も、再び79歩→77歩になってしまうので、7筋の歩下げはやり直しです。
  • 更に88歩・79歩型から95歩→96歩とすると、86歩・77歩型に戻ってしまうので、またもや8・7筋の歩下げはやり直し…。
  • これが「寿限無」型再帰手順の原理です。手っ取り早く言えば、歩1枚で手数を3倍化する機構とい う訳で、実に超長編向きと言えるでしょう。
  • それでは、C2の解説に入ります。

    24と 同玉 25歩 同玉 26歩 36玉 63馬 26玉 62馬 27玉
    28歩 18玉 <12手>

  • ここから44手1サイクルの持駒増幅に入ります。
12手目18玉 迄

{ 『63馬 27香 19歩 17玉 18歩 16玉 17歩 15玉 16歩 26玉
27歩 16玉 19香 18歩 同香 17歩 同香 同玉 62馬 26香
18歩 16玉 17歩 15玉 16歩 25玉 26歩 36玉』=『A』(28手)
63馬 26玉 62馬 16玉 19香 18歩 同香 17歩 同香 27玉
63馬 17玉 62馬 27玉 28歩 18玉 }=『持駒増幅』(44手)
<56手>
『持駒増幅』 <100手>

  • 歩を3枚使って4枚稼ぎ、結果的に歩1枚増やしています。
100手目18玉 迄
  • ところで、100手目の局面からこれ以上『持駒増幅』をリピートしても意味がありません。そろそろ歩下げに入る方法を考えなければいけないのですが…。

2) 一歩不足の謎

たくぼん
トリックが見破れない。時間切れです。無念。
真T
C2は解けませんでした。10000手超なんて滅多に解く機会がないので、解きたかったのですが残念です。
  • 全体の約1%しか手が進んでいないこの辺りが、実は本局最大の難関です。
  • 何故なら、現状では持ち歩の上限が5枚なのに、歩下げに4枚、右辺での香補給に2枚がどうしても必要なので、普通に歩下げに入ろうとしても手詰まりに陥るのです。
  • 逆に言えば、歩を1枚節約するか捻り出すかすれば道が開けるのですが、これが言うほど簡単ではありません。担当が嵌った紛れの内、主要なものを挙げてみましょう。
    1. 47歩を49に下げる。(49歩型のままで玉を右辺に戻す事が出来ない)
    2. 47歩を46や45に突き出して、同玉と取る。(馬筋が悉く不都合で駄目)
    3. 5・6筋で工夫する。(歩下げ位しか手段が無いが、それも後ろに1段しかないので無意味)
    4. 1・2筋で工夫する。
市村
1・2筋での燃料補充が旨く行かず、走行が出来ません。
持駒歩5、持駒香歩3は途中で燃料きれ。持駒香歩3で、28・19に歩を残せば、走行可能ですが、実現不能。持駒歩4で、攻方18香、玉方16玉・17歩は、実現と走行出来ますがスタート不能。
これ以上の思考の継続を断念します。
  • という事情で、上記1. 〜4. はいずれも僅かに届きません。
  • では、どうすればこの謎を解く事が出来るのでしょうか。「これ以上の思考の継続」を再開して下さった市村さんにご登場頂きます。
市村
本局の主題は、持駒変換での一歩不足の解消方法と手数短縮のテクニックにあります。
最初は、49歩での一歩不足解消を考えましたがこれは駄目。盤面を隅から隅まで見て47歩に気付き、玉での消去を試みましたが、これも不能。最後に、窮余の一策として、まさかと思いながら考えたのが成香に頼る手段です。
166手目46同成香 迄

{ 『A』
63馬 26玉 62馬 16玉 19香 18歩 同香 17歩 同香 27玉
63馬 17玉 62馬 (*1)26香 18歩 同玉 63馬 27香成 19歩 17玉
62馬 26杏 18歩 同玉 63馬 36杏 19歩 27玉 28歩 26玉
27歩 25玉 26歩 35玉 62馬 45玉 46歩 同杏 63馬 35玉
62馬 36玉 63馬 26玉 62馬 27玉 63馬 36杏 28歩 26玉
27歩 17玉 62馬 26杏 18歩 16玉 17歩 15玉 16歩 25玉
26歩 16玉 19香 18歩 同香 17歩 同香 27玉 63馬 26玉
62馬 27玉 63馬 17玉 62馬 27玉 28歩 18玉 }=『47歩消去』(106手)
<206手>

206手目18玉 迄
  • これがマジックの仕掛けです。
  • 普通、合駒を発生させるには攻方の持駒が大量に必要で、ただでさえ持ち歩の少なさが懸案の局面にあっては論外なのですが、本局の場合は歩の枚数がピッタリ間に合っています。
  • しかもそれによって持駒増幅が一から出直しになるため手数が約2倍に!
  • 何とも都合の良い手順があったものです。
  • 尚、市村さんは142手目以降を次の手順で47歩消去を行っていました。
  • (*1)から

    26香 18歩 同玉 63馬 27香成 19歩 17玉 62馬 26杏 18歩
    27玉 63馬 36杏 28歩 26玉 27歩 35玉 62馬 45玉 46歩
    同杏 63馬 35玉 62馬 36玉 63馬 25玉 26歩 同玉 62馬
    27玉 63馬 36杏 28歩 26玉 27歩 16玉 17歩 同玉 62馬
    26杏 18歩 16玉 17歩 25玉 26歩 36玉 63馬 26玉 62馬
    15玉 16歩 同玉 19香 18歩 同香 17歩 同香 27玉 63馬
    17玉 62馬 27玉 28歩 18玉 <206手>

  • 作意と同手数の非限定順ですので、勿論これでも正解です。
  • さて、これでやっと歩下げに入れる見通しが立ちました。

    『持駒増幅』×3 <338手>
    『A』 <366手>
    63馬 47玉 48歩 58玉 59歩 68玉 69歩 77玉 78歩 67玉
    68歩 57玉 58歩 46玉 47歩 35玉 62馬 36玉 63馬 26玉
    62馬 16玉 19香 18歩 同香 17歩 同香 27玉 63馬 17玉
    62馬 27玉 28歩 18玉 <400手>

400手目18玉 迄
  • これで歩の下げ方はわかったので、一気に手を進める事にしますが、手順を細かく書いていると紙数が膨大になるので、手順の表記はごく簡略にとどめます。

    78歩→79歩 <788手>
    86歩→87歩 <1180手>
    77歩→78歩→79歩 <1956手>
    87歩→88歩 <2348手>
    77歩→78歩→79歩 <3124手>
    95歩→96歩 <3520手>
    77歩→78歩→79歩、86歩→87歩 <4688手>
    77歩→78歩→79歩、87歩→88歩 <5856手>
    77歩→78歩→79歩、96歩→97歩 <7028手>
    77歩→78歩→79歩、86歩→87歩、
    77歩→78歩→79歩、87歩→88歩、
    77歩→78歩→79歩 <10140手>

  • これで漸く歩下げ終了。84とを剥しに行きます。
10140手目18玉 迄

『持駒増幅』×2 <10228手> 『47歩消去』 <10334手>
『持駒増幅』×3 <10466手>
『63馬 27香 19歩 17玉 18歩 16玉 17歩 15玉 16歩 26玉
27歩 16玉 19香 18歩 同香 17歩 同香 同玉 62馬 26香
18歩 16玉 17歩 25玉 26歩 36玉』 =『B』(26手)
<10492手>
63馬 47玉 48歩 58玉 59歩 68玉 69歩 77玉 78歩 86玉
87歩 95玉 96歩 94玉 95香 同と 同歩 85玉 86歩 76玉
77歩 67玉 68歩 57玉 58歩 46玉 47歩 35玉 62馬 36玉
63馬 26玉 62馬 27玉 63馬 17玉 62馬 27玉 28歩 18玉 <10532手>

  • これで一件落着。
  • ではなく、この辺りが本局最後の考え所です。
市村
収束では、香歩5の持駒で一気に寄せるのがこの局の流れですが、大幅な手数超過。見事に裏をかかれて、手数の短縮に紆余曲折しました。
10532手目18玉 迄

『持駒増幅』×3 <10664手> 『A』 <10692手>
63馬 47玉 48歩 58玉 59歩 68玉 69歩 57玉 58歩 46玉
47歩 35玉 62馬 36玉 63馬 26玉 62馬 16玉 19香 18歩
同香 17歩 同香 27玉 63馬 17玉 62馬 27玉 28歩 18玉
<10722手>
※68歩→69歩に替えて、58歩→59歩でも同手数で詰む(キズ)。

  • 結果論から書くと、玉は93で詰ますのが正解。
  • という事は、復路での持駒不足を心配する必要が無くなりましたので、最後だけは歩を1段だけ下げれば良いのです。
10722手目18玉 迄

『持駒増幅』×2 <10810手>
『B』 <10836手>
63馬 47玉 48歩 58玉 59歩 67玉 68歩 77玉 78歩 86玉
87歩 85玉 86歩 84玉 85歩 93玉 94香 迄 10853手。

詰上図 10853手目94香 迄
作者
森さんの作品は非限定がないのと、普通に追ったのでは手数をかけても詰まない謎解きの要素が含まれているのが特徴。非限定をなくすのは無理なので、謎解きの要素を加えてみました。
市村
この局ですが、成香による一歩不足解消を発見するのに5日間、手順の整理に2日間、手順の超過に気付いて、手数の短縮に要した日数が6日間、約半月に亘る苦吟の連続でした。
  • 無解者の立場からすると、本局を半月で解くのは“苦吟”の内ではないと思いますよ(笑)
  • ところで、本局を見ていて当然興味が湧くのは、
市村
攻方4筋の歩を成香で消去するこの構想と手順は、力感に溢れ且つ美しく、どこからこの様な発想が湧き出るのか、全くの驚異です。
  • 問い合わせてみました。
作者
本局の原図を作っていたとき(30年ぐらい前)、まず右辺の歩稼ぎ手順を作り、たくさん歩をとって左辺でどう展開するか考えていました。結局、寿限無型で展開することにしたわけですが、この型は歩が余分にあると簡単になってしまうので、1歩だけしか使えないように少しずつ手順を工夫して稼げる歩の枚数を減らしていきました。
今回の図を作ったときも同様に歩を減らしていったのですが、森さんの追悼作品展なので、更にもう1歩減らせたら、きっとおもしろい手順になって、いい謎解きになると思ったのです。
可能性のあるのは47歩消去だけですが、玉で取っては消去できないので、取る駒を発生させる必要があります。これも可能性があるのは2筋で合駒させる香を成香にして取りにくることだけ。
最初は、2筋と4筋で離れているし、4筋の歩を取らせたあとまたその香を取り返さなければならないので、 歩が足りないと思ったのですが、いろいろやってみたら、最大限歩を稼いだときにぴったり47歩を消去できることがわかりました。消去のため歩を使ってしまうので、また稼ぎなおさなければならず、手数も大幅に伸びました。
ということで、歩をぴったり使う消去手順は創作というより発見で、この手順が存在したことは妖精の贈り物かもしれません。
  • 並みの創作力ではそもそも「発見」すら出来ないですね。
市村
詰めた後では、“難解だがパズル解きの醍醐味が満喫出来て楽しかった”と嘯いて見たくなるものです。詰後の感想を解答の末尾に書いていますが、これはほんの要点だけで、まだお伝えしたい事は其の何倍にも達します。詰将棋が世界に誇れる優れたパズルであるとの確信を深めるとともに、このような神秘的な手順を創作された作者に敬意を表する次第です。
  • と、市村さん大絶賛の本局ですが、この構想の“作者”が、どうやらもう1人いるようなのです。
橋本
本局の目玉は合駒に47歩を取らせるトリックですね。森茂「龍の顎」で、4筋の歩が消える機構があったのを思い出しますが、それを更にひとひねりした感じです。
実は私も「シェエラザード」を作っているときに、この47歩消去の筋(あるいはそれに類する筋)を何とか入れられないか、死ぬほど考えました。手順の完全限定を重視したため、結局それは実現できなかったのですが、そのおかげでこの作は見た瞬間ほぼ(手数は数えなくてはいけませんが)理解できました。たとえ形にならなくても、いろいろな筋を追求しておくことは、無駄にはならないんですね。
  • 「シェエラザード」の解説の最後で作者の言葉を引用した際、「(中略)」とした部分がありましたが、 そこにはこう書いてありました。
    逆に、筋を減らして2つの筋で持駒増幅ができれば、増幅機構自体ではなくそれを利用した2次プロットの方に凝ることができます。実際その路線でC2と全く同じ機構を思いついた(成香による置駒消去も含めて)のですが、非限定を消す方法までは見つけられませんでした。非限定を甘受すれば、「シェエラザード」の持駒増幅機構でも、成駒発生→置駒消去の手順が入れられますし、歩の枚数が18枚でなくもっと沢山あれば、3つの筋のうち、真ん中の筋で成駒を作ることが可能です。これを、非限定なしに歩18枚の制約の中で実現できないか、ということも随分考えたのですが、結局挫折しています。

  • お二人の作風の違いが端的にわかるエピソードですね。
  • 非限定という点で行くと、個人的には特に最後の歩下げ(5・6筋どちらでも可)が、詰上りにも影響するので若干気になる所です。
  • またTETSUさんは次の点を気になさっていました。
作者
最初は左下隅の金を入手して詰める予定だったんですが、どうやっても取れないので、左上でシンプルに詰めてしまいました。そこが不満なので、もう少し改良してみたのが下図です。
C2改良案
協力詰 12693手
TETSU作 C2改良案 協力詰 12693手 図面
作者
84とを取るまでは同じで、そのあと98と、99圭と取って還元玉で収束。こちらはnfmで検討できなかったので、最短かどうか分かりません。
  • 出来ればこちらの図で出題したかったのですが、今回は安(完)全性を優先しました。今後の研究が待たれます。
  • また、市村さんからはこのようなご質問を頂きました。
市村
ところで、持駒香歩3から持駒香歩4にするために、つまり歩1枚を増やすために、238手もの手数を掛ける。これは新記録では?
  • 文脈からすると47歩消去を意識してらっしゃるようですので、もっと細かく定義すると「盤上の歩やと金を一旦受方に取らせる事で、攻方の駒台に置く事が出来る歩の枚数を増やす」でしょうか。
  • 過去作に疎いもので、本局がレコードかどうかは確かめられませんでしたが、「盤上の歩やと金を一旦受方に取らせる事で、その駒を攻方の持駒に出来る(但し、駒台に置く事が出来る枚数が増える訳ではない)」では、森茂・橋本孝治両氏による「寿限無」完全限定化案32189手において、約8000手掛けて43とを玉方に取らせるという桁違いの構想がありました。
協力詰 32189手
TETSU作 C2改良案 協力詰 12693手 図面
  • 因みに43と消去を思い付いたのは森さんだったそうです。改めて氏の発想の豊かさに敬意を表します。
  • この2作品を越える記録をご存知の方はご連絡下さい。
【Cコース全解者】(2名)

橋本孝治 市村道生

【1題】(2名)

真T たくぼん

総評コーナー

隅の老人B
いつも、いろいろなルールの出題で楽しく、苦労しています。
(中略)
解けない問題が多く、特に、「シェエラザ−ド」が解けない、残念無念。解答発表がが楽しみです。
たくぼん
かなりハードな選題で1ヶ月ちょっとではしんどかった。たくさんの解答者があることを望みます。それにして森氏の偉大な功績は計り知れないものがありますね。それをしっかりとした形で残すことが残された人の重要な役目となるでしょう ね。
伊達
森茂氏がお亡くなりになった今、超長編の作図をなさるのはほぼ神無一族になってしまった気がします。皆さんも(そして僕も)これを機会に奮起して、超長編を作っていくことができたらな、と思います。
橋本
この作品展、ネットでの発表となるため、多少の危惧はあったのですがその懸念を払拭するような充実した作品が揃い、故人の偉大さを偲ぶ良い機会になったと思います。小峰さんも初担当でこの企画ですから大変だったと思いますが、丁寧なルール説明、コース分けの企画など、初担当とは思えないほど出来栄えの良い出題稿でした。結果発表までもうひと息、頑張ってください。

解答ランキング

編集後記

2007年3月29日 小峰耕希