神無一族の氾濫 解説

 「神無一族の氾濫」は1993年9月、詰将棋パラダイス450号記念に特別懸賞として神無一族の作品を大量出題したのが始まりです。

 以来、半年に一度のペースで「神無一族の氾濫」と称した特別懸賞出題を行ってきました。

 ここでは、詰将棋パラダイス誌に了承していただき、過去の「神無一族の氾濫」の原稿を再録しています。


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□ 第1回

出題: 1993.09,結果発表: 1993.12,担当: 太郎

発表作品
1a) ばか詰 5手神無七郎
b) 天竺ばか詰 5手神無七郎
2ばか詰 5手神無太郎
3ばか詰 7手神無太郎
4ばか詰(持駒制限) 9手神無六郎
5ばか自殺詰 6手神無七郎
6禁欲ばか詰 11手神無六郎
7強欲ばか詰 7手神無六郎
8安南ばか詰 5手神無太郎
9安南打歩ばか詰 7手神無六郎
10安南打歩ばか詰 7手神無六郎
11安北ばか自殺詰 6手神無次郎
12安北ばか自殺詰 8手神無次郎
13対面ばか詰 5手神無太郎
14対面ばか詰 21手神無七郎
15対面ばか詰 ∞手神無太郎+三郎
16対面ばか自殺詰 8手神無三郎
17対面ばか自殺詰 8手神無六郎
18対面ばか自殺詰 8手神無七郎
19対面ばか自殺詰 10手神無六郎
20対面ばか自殺詰 18手神無七郎
21対面ばか自殺詰 70手神無七郎
22背面ばか詰 7手神無八級
23背面打歩ばか詰 11手神無三郎
24背面ばか自殺詰 6手神無三郎
25背面ばか自殺詰 6手神無三郎
26背面ばか自殺詰 6手神無三郎
27背面ばか自殺詰 6手神無太郎+三郎
28天竺ばか自殺詰 8手神無三郎
29ナイト玉ばか詰 8手神無八級
30打歩ナイト玉ばか詰 8手神無太郎
コメント

 記念すべき第1回の「氾濫」である。

 当初はこれが半定期化するとは思いもよらなかったが、自分の作品がどのように扱われるかわからないフェアリーランドに投稿するよりも、自分達で出題形式をコントロールできるこの特別出題の形式がすっかり気に入ってしまい、この後一族の作品は主にこの「氾濫」を舞台とすることになる。

 (余談だが、この自由を確保するために懸賞費用を自分達で負担していることは書いておいてもいいだろう。すべてに美味い話はないのだ。)


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□ 幻の氾濫

未発表 (1993.11 作稿),担当: 太郎

発表作品
1ばか詰 5手神無太郎
2ばか詰 5手神無太郎
3ばか詰 5手 5解神無三郎
4ばか詰 9手 2解神無六郎
5対面ばか自殺詰 6手神無七郎
6a) 対面ばか自殺詰 10手神無七郎
b) 対面ばか自殺詰 10手神無七郎
7背面ばか自殺詰 6手神無太郎
8背面ばか自殺詰 6手神無三郎
9対面ばか自殺詰 12手神無七郎
10対面ばか自殺詰 16手神無七郎
11背面ばか自殺詰 12手神無三郎
12背面ばか自殺詰 12手神無三郎
13ばか自殺詰 36手『星姫』神無三郎
14安南打歩ばか詰 7手太郎六郎
15安北ばか詰 13手神無六郎
16安北ばか自殺詰 14手太郎三郎
17対面ばか詰 73手神無七郎
18背面打歩ばか詰 19手神無三郎
19マドラシばか詰 9手神無六郎
20マドラシばか詰 9手神無太郎
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 第1回の氾濫に引続いて大量出題を目論んだが、詰パラのフェアリー詰将棋に対する「総量規制」を理由にボツになった原稿である。

 挑発的な選題文で一族の主張をかなり明確に押し出しており、「読みごたえのある」出題稿になっていると思う。


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□ 第2回

出題: 1994.06,結果発表: 1994.09,担当: 七郎

発表作品
1マドラシばか詰 9手神無六郎
2マドラシばか詰 9手神無太郎
3ばか自殺詰 36手『星姫』神無三郎
4対面ばか詰 73手神無七郎
5ばか詰 117手神無十郎
コメント

 上記のような経緯もあり、路線修正したのがこの原稿。担当もここから七郎に替わった。これには普通詰将棋で実績のある七郎に担当をさせれば、詰パラに原稿を載せやすいだろうという、多分に政治的(?)な意図もある。

 出題量は当初の原稿より大幅に縮小したが、密度は濃い選題になっている。私見では第8回までの氾濫の中で最高レベルの選題と思う。

 特に、5番の神無十郎作のばか詰117手を選題できたことが担当者としては嬉しかった。


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□ 第3回

出題: 1994.12,結果発表: 1995.03,担当: 七郎

発表作品
1入れ替えパズル 74手TETSU
2キルケばか詰 5手神無太郎+次郎
3キルケばか詰 5手神無太郎+次郎
4キルケばか詰 9手神無六郎
5キルケばか詰 9手神無六郎
6キルケばか詰 109手神無七郎
7対面ばか自殺詰 16手『百万石』神無太郎
コメント

 選題の自由が利く「氾濫」の特性を活かして、キルケ特集を組んでみた。
キルケ以外にもTETSU氏の入れ替えパズルのような気の利いた問題や、神無太郎氏『百万石』という傑作を送り出すことができ、自分としては会心の選題ができたと思っていた。

 (それは概ね間違っていなかったが、入れ替えパズルの「もっとよい出題の仕方」があることが出題後に見つかって、少し悔しい思いをした。)


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□ 第4回

出題: 1995.06,結果発表: 1995.09,担当: 七郎

発表作品
1マドラシばか詰 5手神無太郎
2駒(飛)ばか詰 7手 2解神無六郎
3ばか自殺詰 20手神無七郎
4攻方取禁ばか詰 23手神無六郎
5天竺ばか詰 25手神無金四郎
6ばか詰 29手『時姫』神無三郎
7打歩ばか詰 33手『白雪姫』神無三郎
8ばか詰 65手(条件付)神無十郎
コメント

 半年に1回の「氾濫」とはいえ、限られたメンバーではさすがに作品を揃えるのが苦しくなる。

 かといって、出題作のレベルを極端に落とす訳にも行かず、前回のような特集形式の出題は断念した。

 そしてこれ以降は、このように全題ルールが異なることが普通になってしまうのである。

 ルールの多様性があだになったか、中篇主体の選題にもかかわらず、白旗組が続出した。

 なお、この時にはじめてコンピュータによる自動創作の作品を出題に混ぜた。

 コンピュータによる創作である事を伏せると、その作品はそこそこの好評を得られることが結果稿から見て取れる。


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□ 番外:神無金四郎個展

出題解答: 1995.12,担当: 七郎

発表作品
1ばか詰 11手
2ばか詰 13手
3ばか詰 13手
4ばか詰 15手
5ばか詰 17手
6ばか詰 19手
7ばか詰 19手
8ばか詰 27手
9駒(金)ばか詰 27手
10駒(金)ばか詰 45手
11駒(金)ばか詰 61手
コメント

 ここになぜ「番外」が来るのか?

 実はこのときも「幻の第5回神無一族の氾濫」が発生したのである。

 ほぼ同時期に他の作家によるフェアリーの特別懸賞出題があったため、例の「総量規制」に引っ掛かってしまったのだ。

 そのため泣く泣く原稿を書き直したのがこれ。

 金四郎の正体が「電脳」であることをばらした回でもある。


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□ 第5回

出題: 1996.06,結果発表: 1996.09,担当: 七郎

発表作品
1ばか自殺詰 10手神無太郎
2ばか自殺詰 14手『謎姫』神無三郎
3麒麟ばか詰 39手神無金四郎
4ばか千日手 48手森 茂
5駱駝ばか詰 77手神無七郎/金四郎
6取禁ばか詰 77手 詰位置[51]小林/花沢/橋本
コメント

 前回から1年空いたため、再び凝った選題が可能になったのがこの回である。

 神無三郎氏の傑作『謎姫』の出題のほか、 森・花沢両氏のゲスト出演、正解者ゼロとなった超難解駱駝ばか詰の出題等、 話題には事欠かなかった。

 氾濫初の不完全作(6番)というオマケがついたのは余計だったが...


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□ 第6回

出題: 1996.12,結果発表: 1997.03,担当: 大九郎

発表作品
1ばか詰 11手神無太郎
2ばか詰 125手神無七郎
3対面ばか自殺詰 6手神無六郎
4対面ばか自殺詰 6手神無大九郎
5a) ばか詰 13手神無七郎
b) クィーン玉ばか詰 13手神無七郎
6ゼブラ玉ばか詰 25手神無三郎
7グラスホッパー玉ばか自殺詰 26手神無太郎
8a) ばか千日手(条件付) 44手神無大九郎
b) ばか千日手(条件付) 44手神無大九郎
コメント

 ここからマンネリ気味の七郎に替わって、大九郎氏の選題である。

 氾濫候補作を自薦させると、みんな好き勝手なルールの作を出して来るので、若い大九郎氏は苦労したと思う。(こういうとき“年寄り”だと、傲慢に自分の主張を通すんだが...)

 なお、大九郎氏が担当したこの回から、「氾濫」でもフェアリーランドと同様なロイヤル駒表記や6点制による採点制度を導入している。


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□ 第7回

出題: 1997.06,結果発表: 1997.09,担当: 大九郎/七郎

発表作品
1ばか詰 79手『龍姫』神無三郎
2対面ばか自殺詰 6手神無大九郎
3背面ばか自殺詰 10手神無太郎
4安南ばか自殺詰 18手神無七郎
5安北ばか自殺詰 38手神無七郎
6キルケばか自殺詰 6手神無太郎
7ナイトばか自殺詰 8手神無右京
コメント

 この回は、大九郎氏が多忙なため、大九郎氏が選題を、七郎が結果稿を担当するという変則的な形態を取っている。

 選題の方は例によって、すべて異なるルール。作品としては右京氏の初登場作が注目される回である。


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□ 第8回

出題: 1997.12,結果発表: 1998.03,担当: 右京

発表作品
1ばか詰 63手『能姫』神無三郎
2背面キルケばか自殺詰 4手神無三郎
3ナイトライダー玉ばか詰 7手神無右京
4打歩ばか自殺詰 10手神無太郎
5打歩きりん玉ばか詰(条件付) 35手神無大九郎
6打駒詰 41手神無十郎
7背面ばか詰 201手神無七郎
コメント

 この回から、右京氏に担当が交代。

 一族の作品のクセの強さを逆用して、「作者当て」の趣向を選題に盛込んだのは、うまいアイデアだと感心させられる。

 そこで、表の左欄でも作者名のところを白字にしてみた。この回の氾濫を見ていない方は、出題稿を読んで作者当てに挑戦してみていただきたい。


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□ 赤木誉幸氏 結婚祝賀詰

出題: 1998.05,結果発表: 1998.07,担当: 右京

発表作品
1かしこ詰 39手神無七郎「カ」
2ばか詰 15手神無三郎「オ」
3ナイト玉ばか詰 9手神無右京「ル」
4天竺ばか詰 13手神無太郎(ハート)
コメント

 大九郎(赤木誉幸)氏の結婚を祝って、一族で祝賀詰を贈ることにした。

 いつもの「氾濫」とは違って、じっくり作品を作る時間がなかった割には、粒が揃ったと思う。偶然とは言え、すべての作品に桂合(敬愛)が入って、内容的な統一性もとれた(ルールは相変わらずバラバラだけど (^_^;)


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□ 第9回

出題: 1998.06,結果発表: 1998.09,担当: 七郎

発表作品
1ばか自殺詰 106手『なりなり12』神無大九郎
2ばか自殺詰 106手『なりなり10』神無大九郎
3ばか自殺詰 170手神無小五郎
4打歩ばか詰 173手『輪姫』神無三郎
5ばか詰 4649手神無十郎
コメント

 第9回は「史上最大の氾濫」と銘打ち自信作ばかりを出題した。

 残念なことに十郎氏の作品に早詰を生じたが、解答者には十分満足いただけたと思う。

 ただ、間違えたのは結果稿のページ数。今回だけ特別に2ページ増やしてもらったのだが、いざ結果稿を作成してみると全然足りない。こんなことならあと1ページ貰っておくんだったと後悔した。

 そういうわけで、結果稿がやや舌足らずになった分、ここに補足資料を掲載することにした。より詳しい情報として参照して戴きたい。

補足資料1

氾濫9出題作の略記なしの全詰手順。fmviewで鑑賞可能。

補足資料2

駒井信久氏による神無十郎作の早詰解。

補足資料3

中村剣氏による神無十郎作の早詰解。


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□ 第10回

出題: 1998.12,結果発表: 1999.03,担当: 三郎

発表作品
Aコース
1ばか自殺詰 10手(持駒制限)神無三郎
2安北ばか自殺詰 8手神無次郎
3背面ばか自殺詰 8手神無太郎
Bコース
1ばか自殺詰 14手(持駒制限)神無三郎
2背面ばか自殺詰 8手神無太郎
3マドラシばか自殺詰 22手神無七郎
4鳳凰ばか千日手 76手『Spiral』神無大九郎
コメント

 第10回は趣向を凝らしてAコースとBコースに分割した。

 これは易しいコースと難しいコースの2つを設けることで、解答者増とマニアを満足させることの両方を狙った物である。

 狙い通り解答者は増えたが、これは主にAコース1番の功績。後は出題者が思ったほど易しくはなかったようだ。

 また、この回で再び採点制度を廃している。

補足資料

氾濫10結果稿ノーカット版

 ページ数の制約をまったく気にせずに作った原稿なので、パラに載った解説よりも面白いと思います。


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□ 第11回

出題: 1999.06,結果発表: 1999.09,担当: 七郎

発表作品
15五詰 35手神無ガイ
2打歩ばか詰 51手『青姫』神無三郎
3対面ばか自殺詰 12手神無次郎、神無大九郎
4キルケばか詰 9手神無大九郎
5キルケばか詰 11手(2解)神無太郎
6キルケばか自殺詰 80手神無七郎
コメント

 第11回の初登場は神無ガイ氏。普通詰将棋では実績のある彼も、フェアリーではこれが初登場である。ルールはなんと昔懐かしい5五詰。普通詰将棋に近い感覚で解けるので、解答増に貢献してくれた。3の対面ばか自殺詰はここでようやく日の目を見ることになった傑作である。

 後半はキルケ特集にしてみたが、6の余詰でいまいち冴えない結末となってしまった。

 なお、ここに収録した結果発表の原稿は、ページ調整のカットを入れる前の原稿である。パラに載った原稿と少し違うのでチェックしてみて欲しい。


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□ 第12回

出題: 1999.12,結果発表: 2000.03,担当: 七郎

発表作品
1ばか詰 77手『飛行船』神無三郎
2ばか詰 89手『真夏の夜の夢』神無三郎
3Kマドラシばか自殺詰 36手『飛行艇』神無太郎
4Kマドラシばか自殺詰 12手神無右京
5攻方取禁ばか詰 37手『龍踊り』神無太郎
(六郎原案)
6ばか自殺詰 100手『なりなり14』神無大九郎
コメント

 1〜3はほぼ同一のテーマ「7連合×2」である。ミニ特集のつもりで意識的に前半に揃えてみた。フェアリー系で、このテーマはかなり解答者の意表を突いたようだ。難度も適当で、この前半部分だけの解答もかなりあった。

 後半はバラエティだが、かなりレベルの高い選題ができたと思っている。反面、解答者は極端に減り、後半の解答者数はたった3名になってしまった。良い作品群だけにもっと多くの人に解いて欲しかった。


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□ 第13回

出題: 2000.06,結果発表: 2000.09,担当: 七郎

発表作品
1安南ばか自殺詰 8手神無右京
2ゼブラ王ばか自殺詰 10手神無右京
3ばか自殺詰 14手神無太郎
4全取禁ばか自殺詰 44手神無大九郎
5ばか詰 145手『かごめかごめ』神無三郎
6ばか詰 249手神無十郎
コメント

 ちょうどこの氾濫の時期に「神詰大全」が完成。その「神詰大全」を懸賞にして解答を募集した。解答者数はそこそこであったが、みんな5番の解答ばかり。他の問題を解答した人が非常に少なく、淋しい思いを感じた回でもある。

 出題の方は特に趣向はなく、バラエティである。非限定を含む作品(4と6)を出題したが、これについては出題時に説明しておいたせいか批判的な評はなく、選題者としてはほっとしている。